自然を破壊する「万物の霊長」=編集余話 瞻星台

日付: 2011年08月31日 18時35分

 アメリカ東海岸ではハリケーン、東アフリカでは旱魃による飢饉、韓国をはじめ世界各地ではゲリラ豪雨による洪水と、地球がまるで病んでいるようだ▼異常気象については叫ばれて久しいし、あらゆる環境破壊も前々から指摘されていた。どれも人間がもたらした異変といっていい。自然とは関係ないかもしれないが、ドル安と円高による経済不安、原発の脅威も、万物の霊長としての人間の所業だ▼万物の霊長とは『書経』の言葉で「万物の中で最もすぐれているもの、すなわち人間のこと」だそうだ。別の言い方をすれば、「人すなわち天」で、人間の尊厳性は神と同一の尊厳性に由来するともいう。あるいは、天地の徳を受け、かつ天地の徳を知っているがゆえ、だという。徳とは、人間の持つ気質や能力に、社会性や道徳性が発揮されたものである▼尊厳性は人間だけのものなのか。徳は人間だけが所持しうるものなのか。無為自然(むいしぜん)という言葉もある。「徳があれば教育しなくとも人は教化される」という老子の教えである。人為的な行為を排し、宇宙のあり方に従って自然のままであることを教えたものだ。つまり自然に帰れという意である▼最近の自然災害や経済危機は、まさに人間がもたらしたものとしか言いようがない。人間が自然の秩序を破壊しているのだ。人間は、万物の霊長として、あらゆる生命をいたわり、共存していかなければならないはずだが、人間のみの都合で文明生活を追い求めた結果、地球は本来の機能を失いつつある。


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