「金日成民族」とは?=編集余話 瞻星台

日付: 2011年08月12日 19時05分

 あらゆる生物にルーツがあるように人間にもルーツがあり、民族にもルーツがある。種族、民族のもつ神話は彼らの来歴を解き明かすひとつのよすがだ。「弘益人間」形成の使命を帯びて太伯の神壇樹に降臨した桓雄の物語、ヒトになることを望んだトラと熊の物語は語り継がれてきた韓国の創世神話だ▼素朴な民族観念にとって不愉快な現象が起きたのは94年のこと。金日成死後、北が同年10月に「金日成民族」という用語を使い出した。総連機関紙「朝鮮新報」の近日号も「金日成民族」という言葉を臆面もなく用いている。「社会主義の朝鮮の始祖は金日成だから朝鮮民族は金日成民族」ということらしい。「社会主義の始祖」はヨーロッパにもアジアにも数多くいるが、個人の名を冠にした民族はない。北だけである▼民族とは居住する土地、血縁関係、言語、伝承、宗教の共有、社会の成り立ちなどを基準に、独立した文化的特徴によってほかと区別されるといわれている。同じ地域で永らく共同生活をすることでこうした文化的特徴が培われる。「生まれて100年にもなっていない人物を取り上げて民族の名に冠するというのは子どもっぽい」とは66年前の8・15を20歳前の青年として迎えた人の評である。「名前、まして国家や民族の名前を変えるのは浅はかすぎる。北は民族の概念をなくしてしまっている」▼最近中国の胡錦濤主席は一党独裁を強調するくだりで「民主がなければ社会主義もない。人民が主となることが核心だ」と述べた。民主がなければ金日成民族もないだろう。


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