柳東烈
国家情報院は北韓の対南工作部署である225局(旧対外連絡部)の指令で結成されたスパイ団の「旺載山事件」を捜査中だ。すでに5人を拘束し、スパイ団の残存勢力を一網打尽するため捜査中だ。
安保事件としての重要性に同意してエンバーゴー(Embargo、メディアがある時点まで関連内容を報道しないことを約束する用語)を守るため報道を自制した言論が聯合ニュースを筆頭に昨日の午後遅くからこの事件を報道している。
東亜日報など各メディアの報道内容に接した筆者は愕然とした。各言論が報道しているスパイ団の名称である「旺載山」に対する解説のためだった。
旺載山とは咸鏡北道穏城地方の村(里)の地名で、北韓では「旺載山会議」としてもっと知られている。北韓の公式文献によれば「旺載山会議」とは1933年3月11日、金日成が抗日遊撃隊部隊を率いて咸鏡北道穏城地方の旺載山に進出して招集したという「穏城地区地下革命組織責者および政治工作会議」をさす。この会議で、金日成が<武装闘争を国内へ拡大発展させるために>という演説を通じて、武装闘争を国内に拡大発展させることを強調し、反遊撃区の創設方針を提示したと主張する。北韓では重要な抗日革命の史跡として聖域化されている。
ところが、これは北韓側の完全な歴史の捏造だ。「旺載山会議」というのは存在しない虚構である。「旺載山会議」を開催したという1933年当時、金日成は北側主張のように白頭山を根拠地に反日人民遊撃隊を率いていたのではなく、満州の東満地区の中国共産党遊撃隊である東北人民革命軍(1936年東北抗日連軍に統合)に加担して中国共産党に忠誠を尽していた。「旺載山会議」は北韓当局が金日成を偶像化するため歴史を捏造(*右写真)した「抗日武装闘争史」の一部だ。
こういう事実を無視し国内言論が「旺載山スパイ団事件」を報道しながら、「旺載山会議」に対する北韓の捏造主張をチェックもせずそのまま引用して報道するのは事実(fact)に反することだ。北韓の「金氏集団」の天人共怒すべき歴史の捏造を正当化し宣伝してやることであるのを認識せねばならない。
このようなハプニングはわずか100年も経たない解放戦後史に対する認識の不在と誤りのため、未だ金日成の正体を正確に把握していないためだ。金日成は、北側が主張したように白頭山を根拠地として独自に「朝鮮人民革命軍」という抗日武装団体を結成して朝鮮解放を成遂げたのではなく、1920年代は匪賊活動を、1930年代には中国共産党のために、1940年代はソ連共産党のために一部の抗日活動をやっただけだ。朝鮮独立運動に従事したことの無い者だ。
捜査当局は、「旺載山スパイ団事件」の公式発表の時、専門家の諮問を得て、スパイ団の名称である旺載山の由来に対して正確に知らせねばならない。