日本人の礼儀正しさ 2000年前から!?=編集余話 瞻星台

日付: 2011年06月07日 23時55分

 某新聞を見ていて、エッと驚いた。「日本人はなぜ世界から尊敬され続けるのか」「魏志倭人伝…日本人の公徳心の高さ、礼儀正しさは、2000年も前から世界が驚きをもって伝えていた」「日本人はこの誇りを忘れてはいけない」などのフレーズが躍る単行本の広告を目にしたからだ▼日本人の礼儀正しさはよく知られていることだから、世界から尊敬されることは否定しない。が、「2000年前から…」などのフレーズには違和感を覚えた▼何度も目にしている魏志倭人伝に、倭人を尊敬しているくだりがあったかな、と思いつつ、あらためて目を通してみた。「倭人は帯方の東南大海の中にあり」で始まる魏志倭人伝は、邪馬台国と卑弥呼のことを記述していることで有名な書だが、当時の倭国は辺境にある未開の地という印象しか持たれてない▼ほめているとすれば「婦人淫せず、盗窃せず、諍訟少なし」というフレーズは確かにある。が、その前後は「その俗、国の大人は皆四、五婦、下戸もあるいは二、三婦。婦人淫せず、妬忌せず、盗窃せず、諍訟少なし。その法を犯すや、軽き者はその妻子を没し、重き者はその門戸および宗族を没す」というもので、風俗を表現しているにすぎない。ましてや日本人を尊敬している文章とは言い難い▼著者の黄文雄氏は、明治維新後の日本の為政者らの皇国史観、あるいは征韓論を評価する内容の著者を多く記している。また、嫌韓派の権化のような存在らしいが、自説のために事実を曲解することは書き手として禁じ手である。そういうことのないように願う。


閉じる