先日、近所の日本人から「お国に帰るのですか」と尋ねられた。なんと答えていいのか分からず、無言のまま笑ってしまった▼もっとも、原発事故による放射能汚染のためか、近年日本に住みついている外国人が、我先にと日本から脱出したのは事実だ。特に外資系企業で働く社員などは、一時関西方面やソウルなどに緊急避難するくらいだった。やむをえない部分はあるだろう▼しかし、第2次世界大戦から日本に住み着いた在日韓国人にしてみれば、大地震や放射能汚染があるからといって、すぐに逃げられるところはどこにもない。日本で生まれ育った私たちは、家族や親族もおれば、日常的に働く場所もここ日本にあるのだ。国籍が違うからといって、日本を離れられないのが現状だ。そしてこれからも、地震国である日本で生きていかねばならないのが私たちだ▼隣近所の日本人の、親切さのあまりの言葉だろうが、まだまだ在日韓国人に対する認識がこの程度なのかと、寂しさを感じたのは事実だ。地域住民として日ごろの付き合いは十二分にやってきたつもりだったが、改めて足りなかったのかと感じもした▼在日韓国人が一般の日本の方から理解を得るためには、民団などが進める「地方参政権運動」のように権利獲得のための活動も必要かもしれないが、日本社会全体に貢献すべき奉仕活動や生活に密着した活動の方が重要だ。日本こそが私たちの生活基盤であり、子どもや孫たちの将来を託す国だからだ。もっと心から日本を大事に思う心が必要だ。だから、何があっても逃げることなどない。