原発処理の遅延が被害を大きくする=編集余話 瞻星台

日付: 2011年05月25日 01時43分

 日本政府は、東日本大震災被害による復興に今後数年間、何十兆円規模の予算を配定せねばならない。原発の賠償は別途である。その金額については未定だが、5兆から10兆円近い規模まで見ている。どうであれ復興資金の財源をどうするのかが問われている。集約すると、(1)消費税の引き上げ(2)震災国債を発行し日銀に引き取らせる(3)保有米債を売却する案など提案されている。3案ともに一長一短がある▼浜岡原発全停止も熟慮の結果というが、あまりにも唐突すぎた。産業界が日本の電力供給と福島原発に不安を持ってしまった。オフィス同様、関東から関西へと生産移転が行われている。その流れが円高と相まっていつ海外に向かうか分からない▼福島の一部は放射線量がすでに放射能従事者や警察、消防従事者に認められた上限に達している。この地域は、モノ作りはできない。いまの日本は、生産を維持するにはあまりにもカントリーリスクの高い国になってしまった。電気だけでなく、水の問題や税金も無視できない。特に半導体は、30回程度の洗浄と乾燥を繰り返し製品化する。その水が汚染されていれば厄介だ▼福島原発の処理が長引けば長引くほど、被害は拡大する。風評被害でなく誰も放射線物質のある製品や農水産物は買わなくなる。放射性物質の累積値が高くなると住めない。日本の富の源泉は不動産だ。住めない土地は資産価値がない。その地域が広がる▼関東大震災の2年後に日本は恐慌に陥ったが、東日本大地震のあと、このことがよぎった。どうであれ早急な原発処理を願いたい。


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