焼き肉の文化、刺身の文化=編集余話 瞻星台

日付: 2011年05月11日 09時41分

 焼き肉は、在日の食文化であった。ユッケはサブメニューとして人気があった。ユッケそのものが韓国語で肉の刺身のことだ。日本には魚刺身の文化はあっても、生肉や焼き肉など肉を食べる文化はなかった▼江戸時代、朝鮮通信使を迎えた日本は、たとえば近江彦根(滋賀県)の井伊藩では、仏教文化は肉食をよしとしなかったから、特別に運び口を作り、通信使迎接の肉類を運び入れた。今でも「唐門」と称される黒い脇門が彦根・宗安寺に現存している▼解放後、在日同胞は生きるために、日本の食文化になかった焼き肉や、時には生肉を食したといっても過言ではあるまい。それがいつの間にかキムチ同様に日本社会に吸収され、拡散され、いまや日本の食文化のようになっている。そうしたなかでの焼き肉チェーン店でのユッケ食中毒事件である。在日社会にしてみれば、焼き肉そのものが悪者扱いされているようで、まことに歯がゆい▼昔、親からよく、生もの特に動物性のものは危ないから気をつけて食べるようにと教えられた。だから、生卵も古いものは食べないようにしたし、肉類は火を通すように心がけた。だから、生ものを食するときは気をつけるというのが大前提であるはずだ▼今回のユッケ事件はその初源的なことを怠たったことが根本の原因ではないか。コストダウンのため削ってはいけない「お客の健康」という作業をなくしてしまった。たくさんある焼肉店で問題が起きたのは該当のチェーン店のユッケだけである。事故が起こらないということを前提にした仕入れからの仕組みにあったのだろう。


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