金成昱
1.政治から扇動と宣伝(agitation propaganda)を排除することは難しい。文化圏力(culture power)を左翼に奪われた韓国は一層そうだ。放っておけば真実も偽りに食われてしまう。真実の流通量の拡大のための必死の訴え(agitation)と宣伝(propaganda)がないと正義が不義に屈服する。2008年の「ロウソク乱動」、2009年の「龍山事態」と「双龍自動車事態」、2010年の天安艦爆沈と延坪島砲撃のような法治と安保の破壊状況で世論が一層左傾化された理由もここにある。李明博政府は対国民広報機能の麻痺し、国民に真実を教える扇動と宣伝がまったく無いのだ。
Agitationとpropagandaの概念の無いMB(李明博)政府は、放送の凄じい力を無視した。MBCとKBSの正常化失敗がそうだ。荒唐な操作は減ったものの選挙の時危険な状況が起きると放送は再び操作に出るだろう。私のような右派が空中波の討論に出演できないのは放送が以前と変わりない実例だ。
大衆政治の論理はこうだ。真実が勝利するのではなく、国民に「熱心に教える」側が勝利するということだ。嘘や欺瞞も「熱心に教えれば」大衆は信じてしまう。
「熱心に仕事をすれば」国民が分かってくれるはずという考えは幻想であるだけだ。「熱心に仕事すること」よりもっと重要なことは「熱心に教えること」だ。李明博大統領の危機の原因は、前者でなく後者にある。大衆政治のいろはのような概念が欠けているのだ。
2.宣伝と扇動が偽りや欺瞞を正当化した多少荒々しい事例を挙げてみよう。
■アルゼンチンの第3映画製作者は、「カメラは小銃であり映画は爆薬で、プロジェクターは1秒に24個の映像が撃てる拳銃」と言った。
■第2次大戦の時、米軍を相手にラジオ心理戦放送に携わった12人の日本人がいた。彼らはスイング音楽を流し、故国に置いてきたガールフレンドなど、感情や郷愁を刺激した。兵士たちは彼ら12人を呪ったのでなく「東京ローズ(tokyo rose)」という愛称で呼んだ。
■ヒットラーは、「わが闘争」で、「政治的指導者は単純な説明や教訓を伝達することだけでは追従勢力を獲得できない。その理由は、決して大衆を感動させられないからだ」と言い、献身を通じて大衆の心を動かさなければならないと言った。
ヒットラーが言った献身は、実は「指導者が献身している」というような宣伝・扇動だった。彼は自分の独創的イメージとスタイルを作り出すため演劇俳優から授業を受け、1928年にはナチ党員の演説能力の培養のための大学を建てた。
■ムッソリーニは、自らを「私は政治家でなく狂気に充ちた詩人」と呼んだ。彼も、群衆の一番後ろに立っている人も確かに分かるほどの動作や高度に様式化された顔の表情を開発し規則化した。
■宣伝・扇動の最も悪質な形態はゲッベルスが1933年創設した国立文化院(Reichskultur-kammer)だ。いわゆる「文化院」は、音楽・視覚美術・文学・演劇・新聞放送・ラジオ・映画の7個分野に大別され、また細部領域に分けられた。視覚美術院には絵画、彫刻、建築、室内デザイン、グラフィックデザイン、工芸協会、美術出版、販売、競売などの専攻が設けられた。教育内容は、「国家の指導下にあらゆる分野の創造的要素を一つに集めて単一の意志を実践すること」だった。1935年、この文化院に参与作家は10万人に達し、14万3000人の画家、1万5000人の建築家、2900人の彫刻家、6000人のデザイナーが参加してナチスを正当化する宣伝・扇動に従事した。(*写真の左端はヒットラー、中央にゲッベルス)
3.大韓民国的価値を教えないと祖国は沈没するかも知れない。北韓政権は人類歴史上空前絶後の宣伝扇動集団であり南韓内左翼も同じであるからだ。南・北韓の左翼は、天安艦爆沈後も20~30%の国民を混迷させられるほどの宣伝扇動能力を持っている。
MB(李明博)政府の最悪の敗着は、大韓民国が偽りと欺瞞に満ちた強力な宣伝扇動集団に包囲されているということを忘却したことだ。必死に放送と言論を改革し、インターネットを浄化し、何よりも後進養成のマニュアルである教科書を正さねばならなかったのに、全部失敗してしまった。
大韓民国の正統性を示す李承晩と朴正煕大統領の宣揚どころか、「狂牛病乱動」が起きても米国産牛肉の安全性を積極的に説明しなかった。天安艦爆沈に関してあらゆるデマが相変らず飛び交っていても北韓側の仕業だという公式的発表を数回やっただけだ。
大衆に真実を伝える道具である文化圏力(culture power)の回復と再建、これが今大韓民国勢力の最大の関鍵でありかつ宿題として残っている。