「寄稿」どうする原発 発電と送配電の分離を宣言すべき

化学技術者 元大学非常勤講師 西澤茂郎
日付: 2011年04月20日 00時00分

 3・11から1カ月以上。4月17日付東京新聞は、《「想定外」招いた安全軽視》の見出しで、福島原発事故の経緯を整理している。東京電力が02年と04年にまとめた、過酷事故に関する2つの評価報告書に基づいて検証している。
 電源喪失について、報告書では『……その間に、非常用ディーゼル発電または外部電源を復旧する』としているが、1~6号機の外部電源がすべて喪失。中央制御室の電源復旧は18日後で、タービン駆動の冷却機能は停止した。非常用発電機は6号機の1台を除いて稼働せず、今も高濃度の汚染水があるため、発電機に近付けない。
 核燃料プールについて、報告書では『使用済核燃料プールの燃料の損傷は想定していない』としているが、4号機でプールの水が蒸発、燃料が露出した。4号機では爆発音と火災があり、燃料が熱で損傷し、水素ガスが出て爆発した可能性がある。自衛隊、東京消防庁などが危険の中で放水、注水して冷やし、当座の危機を脱した。
 圧力上昇について、報告書では『格納容器内の除熱に失敗し、圧力が上昇した場合に備え、内部の水蒸気を外部に放出する「ベント」の手段を追加した。想定する事態の進展は遅いため時間的余裕が大きく、冷却装置が故障しても復旧できる』としているが、12日未明までに、1号機の格納容器の圧力が急上昇。設計上の最高圧力を大幅に超えたが、ベントで水蒸気を放出できたのは、政府の指示が出てから13時間後だった。
 以上が経緯であるが、事故直後の3月12日には、中村幸一郎審議官が記者会見を行い「(1号機の)炉の中の燃料が溶けているとみてよい」と発言して、翌日から西山英彦審議官に代わり、今に至っている。
 西山審議官も枝野官房長官も技術面の専門家でない。原子炉の中で何が起こっているかは言わない。そしていきなりレベル7へと2段階引き上げである。テレビなどで学者が、電源が回復し、冷却水システムが動けばなんとかなると言っているうちに、放射能汚染水が急増して、意図的に海に放水する犯罪的行為を行った。
 現場で総指揮を執っている人は誰なのか、何故出てこないのか。西山審議官や枝野官房長官の傍で技術的な説明をすべきだ。あの無残な原子炉建屋の映像を見れば、容易ならざる事態であることを国民は冷静に受け止める。こんな日本は原発を持つ資格はあるのだろうか。
 今世界の電力は、自然エネルギーによる発電量が原発を超えるに至った。それでも、原発を進めようとする人に聞きたい。東京の横田基地に原発を容認しますかと。
 直ちに脱原発を世界に向かって宣言することしか、世界から失われた信頼を取り戻す術はない。そして、発電と送配電を電力会社が独占していることが、自然エネルギーの導入を阻害する主要因の一つであるので、発電と送配電を切り離すことを掲げることを訴える。


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