飢えた北韓軍が北韓崩壊への導火線

南韓内の従北勢力といわゆる宗教団体が対北食糧支援に血眼になったのも以上の平壌の事情と関係していると見られる。
日付: 2011年04月18日 14時25分

 金成昱
餓死者が集団的に出現し得る他のグループはどこだろう? それは軍隊だ。1990年代の半ば以降いわゆる「苦難の行軍」を経て北韓住民の70%以上が配給体制から排除されて市場で生計を立てる市場生活者になった。
「貨幣改革」後の食糧難は基本的に配給体制の故障だ。結局飢える集団は収容所の収監者、老弱者やコッチェビの他に配給体制に全面的に依存する権力集団、特に軍隊だ。脱北者たちが「飢えているのも軍隊、飢えて死ぬのも軍人」と言う理由がここにある。
北韓軍将校出身の安燦一世界北韓研究センター所長は、3月のあるセミナーで「北韓軍は一般住民よりもっと飢えている。彼らは市場や菜園も耕せず補給がないと死ぬ」と言い、劣悪な軍隊の状況を説明した後「今腹がへった北韓軍が体制変革の主体になるだろう」と指摘した。
例をあげよう。この2月、江原道に大雪が降り北韓でも最高1m以上雪が降った。この地域の「人民軍」1軍団と5軍団が大雪で孤立した。数週間食糧供給も途絶えた。対北息筋によれば、数百人が餓死し数千人が行方不明だという。姜哲煥氏は「休戦線の精鋭軍団は国防委員会の特別指示で食糧が供給されているが、後方部隊は米の供給が絶えジャガイモ何粒かで食事を解決して久しい」という。
最近北韓軍の脱営ラッシュは軍の食糧難と直結する。2月21日、北韓戦略センターが発表した「北韓軍の人権侵害状況」の資料によれば、北韓軍大尉出身の朴某氏は、1個中隊の戦闘員100人中、非常召集して集結させると10人も現れないと証言した。30%以上が栄養失調で横になっており、食料を探して出かけた者が20%、工事現場に動員された者20%、無断外出25%など等。一言で軍隊と言えないのだ。
軍の食糧難は忠誠心の弱化につながる。安燦一氏は3月のセミナーで、「北韓軍が金正日政権に忠誠をつくす理由がなくなった」とこう話した。
「今の北韓軍兵士たちは、1990年代の初中盤出生者であり、労働党の配給でな母の市場での収入でやっと生きた世代だ。凄まじい商売で子供を食べさせる両親を見たため労働党や金正日父子のため命捧げるべき何の理由もないと思うはずだ。今生存するのが課題である彼らに金日成が日帝を撃ち砕いたという『抗日パルチザンの革命伝統』などが何の訴求力があり、6・25戦争の英雄らの武勇談が耳に入ってくるはずが無ではないか?」
軍人たちが自由はもちろん、食糧もくれない労働党や金正日父子に忠誠を尽す理由がないという指摘は脱北者たちの間で共通する。核兵器とミサイルで武装しているが、実際には暴圧と飢えの中で潜在的な反金正日勢力になってしまったのだ。
1990年代の半ば以降食糧難の最大の被害者は一般住民だったが、最近の食糧難は配給に依存する軍隊になってしまった。体制を護らねばならない軍隊が最も大きな不満勢力になった現状、金正日政権の致命的な脅威が現れたのだ。これはまた、2011年の韓国のいわゆる「人道的支援」が金正日政権の命の綱に変質した背景でもある。
皮肉にも最近の北の食糧難のもう一つの被害階層は平壌居住民たちだ。彼らは「朝鮮労働党」の食糧特別供給対象である反面、商売は許されない。これは言い換えれば労働党の配給が断たれれば飢えねばならないことを意味する。
平壌まで配給がまともに行われられなくなるや北側は特別供給対象を減らすため今年のはじめ平壌市周辺を市から除外した。だが、力及ばずだ。韓国から行った「非転向左翼囚」らに供給した特別供給も適時に行われず金正日が与えた贈り物まで売って生活費にしなければならない状況だという。
対北支援団体の「良い友たち」によれば、「最近平壌では今年9月まで『食糧を自らの解決しろ』という指示が下された」、「平壌住民たちは、『9月まで食糧を自らの解決しろとのことはつまり9月まで配給が無いという話ではないか』として不安に思う様子だ」と伝えた。平壌居住民らの不安は、金正恩世襲に対する不満に繋がり民心はますます悪くなっているというのが対北消息筋らの伝言だ。
北韓政権の立場では食糧の調達に必死にならざるを得ない。今回の食糧難は以前と違うからだ。軍隊が最も酷く、貨幣改革や3代世襲など住民たちの不平・不満と繋がっている。金正日さえ急死すれば急変事態に直結する状況だ。
平壌を往来しながら対北支援の先頭に立ってきたある牧師は、「平壌の事情が尋常でない。高位幹部らが食糧を支援してくれと駄駄を捏ねる」と言った。実際平壌当局は、「この時代に食糧をたくさん献納する者が本当の愛国者だ」とのスローガンを掲げた。姜哲煥氏は、「食糧100tを国家に納めれば『共和国英雄』称号が授与され、50tは金正日表彰を、30tは労働党入党資格を付与する」と言った。
北韓はこれと言った輸出品がないため、対中国鉱物輸出だけを急激に増やした。「良い友たち」は、最近機関紙を通じて、「2月16日以後鉱物輸出が活発になっている」、「現在約300隻ある北韓の貨物船舶中200余隻が中国と北韓の間を頻繁に往来しながら食糧輸入に一助としていると言われる。主に北韓の鉱物を中国に持ち出し、帰りにはとうもろこし、小麦粉など穀物やラーメン、食品類を運んで来る」と書いた。
南韓内の従北勢力といわゆる宗教団体が対北食糧支援に血眼になったのも以上の平壌の事情と関係していると見られる。住民を救うためでなく、軍や党、金正日政権を救わねばならないという平壌の切迫した事情が投影されたのだ。
脱北者の金・ジョングム氏は、最近自由北韓放送の記事を通じて、「食べられなかったため死を覚悟して北韓を脱出した人々が、対北支援に絶対反対する理由を南韓や国際社会に理解させること自体が真に皮肉なな素材」と言い、「対北支援は支援物資を軍事費や腐敗した独裁維持費に使われ金正日独裁を支援し独裁による北韓住民たちの死を招いている」と言った。
金氏は、「食糧支援が誰に回されるのかの脱北者を対象にした調査によれば、北韓軍(73.6%)、残りは党幹部や政権機関と特権層に、脆弱階層には2%という応答結果が出た」とし、「2%の確率(結果)を得るため98%を支援するというのは、つまり2千万の北韓住民が飢えて死のうが殴られて死のうが金正日軍事独裁を支援するというのも同然」と付け加えた。
彼は、「支援し続ければ『軍部が先に食べても残りは人民が食べるのではないか』、『軍人も北韓人だ』と言いながら対北支援をする」というが、「北韓住民たちは一様に叫ぶ、『金正日と党幹部らの腹だけを肥やす対北米支援は望まない!』、『私たちに自由をくれ!』、『改革開放だけが生きる道だ!』」と書いた。
脱北者ら指摘によれば、2009年11月の貨幣改革後北韓内の餓死者が最小3~4万人に達すると推定される。半数以上が収容施設の収監者たちのはずだが、飢えは軍隊へ拡大し平壌に拡大しがら北韓体制が急激に不安になっている。金正日以後の急変事態が議論されてきたが、北韓急変事態は事実上すでに始まったと言っても過言でない。金正日政権の崩壊と奴隷になった2400万同胞の解放という巨大なエクソダスの始まったのである。
韓国の高潔な(?)人道主義者たちと無知な大衆は「金正日の滅亡」を必死に阻止している。だが、自由統一は自然な歴史の進歩だ。この地の先覚者たちがもう少し奮発すれば1990年代の半ば以降の二度目の急変事態は逆らえない大勢になる。60年間の分断の現状打破がすでに始まった。

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