生まれ育った国がこんなに酷い国とは思わなかった。福島原発事故について、1カ月過ぎた11日、内閣府の原子力安全委員会は、事故当初から1時間あたり最大1万テラベクレル(1兆ベクレル)の放射性物質を放出していたと明らかにした
▼統一地方選挙が終わった翌日の発表。事故から1カ月間、この事実を国民に知らせなかった。さらに12日になって事故レベルを「5」から「7」に2段階引き上げた。今になっての引き上げに、国民は騙されたとの思いを強くしたに違いない。隠蔽の連続だ
▼枝野官房長官はその間「仮に爆発しても何の問題もありません」、「放射能が外に出るということはない」、「仮に放射能が飛んでも安全です」、「海洋に流れることはありません」、「水などに入ることは絶対にありません」と言ってきた。しかし現実では、東京の水道水にも放射能が紛れ込んだ。海には4日、意図的に汚染物質が放出された。それも申請から20分で容認された。漁業団体、地方自治団体、近隣諸国に連絡なし。そんなに慌てていたのだろうか
▼正確な情報の発信と報道が不安を和らげ、混乱を防ぐ最良の手段なのに、全てが後手に回っている。「安全だ」という、国民不在の一方的な情報のタレ流し。真実の伝達による混乱を恐れてなのか、統一地方選をにらんでいたのか。それにしてもこの国の為政者の危機管理のレベルは低すぎる。否、管理できない危機なのかもしれない
▼この1カ月で見えてきたものは「政官産学」みなひとつになったひずみ。真実の何ひとつ伝えないマスコミと政府の姿だった。