危機感あわる報道 シャッター閉める店舗

日付: 2011年03月30日 00時00分

 東日本大震災と福島第1原発の放射線漏れ事故により、言葉の壁があり情報収集力の弱い外国人に必要以上の恐怖と混乱が広がっている。
 特に在留人数が多い在日中国人や韓国人は地震直後から出国のために空港に殺到。中国便は4万~5万円の割引航空券が、正規料金の10万円近くにまでつり上がった。韓国便も同様であったという。
 韓国のテレビ局は、放射能の除染に効くといわれるヨード液を購入しようとする国内人の様子を放映。放射線が韓国まで飛んでいってもその被害は微々たるものなのだが、危機感を煽るような報道が目立つ。中国では、塩が不足するというデマが流れ、大規模な買い占めが起きた。
 東京都内に住む30代のある韓国人男性は、「自分は比較的落ち着いているが、日本語がわからない妻や韓国の家族からは『戻ってこい』といわれる」と話す。「韓国のテレビが危ないといっている」というのが帰国を勧められた理由だという。「なぜ日本では『安全』といっているのか。信じられない」という声もあった。
 東京各地の韓国飲食店では、春休みで増えるはずのアルバイトの学生が帰国し、多くの店のシャッターが下りたままだ。横浜の中華街で60年間営業している料理店も、料理人が帰国してしまい店を閉めざるをえない状況だという。
 韓国では08年、いわゆる「狂牛病」騒動が起きた。科学的根拠のない情報があふれた当時を髣髴とさせる。
 対照的に、日本に根を下ろす在日外国人は、支援物資を送ったり炊き出しを提供したりしている。安全を最優先して本国に一時退避するのはやむをえないが、過熱報道が混乱を助長しているのは否めない。日本は逆に「冷静さ」の強調が不信感を招いている。事実報道に対する姿勢の違いが問われる。 (李載東)


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