韓国も危機管理の徹底を

日付: 2011年03月30日 00時00分

 東日本巨大地震と大津波は東北太平洋岸に多大な人命被害をもたらした。同時に、福島第1原子力発電所に甚大な損傷を与え、原発事故を引き起こした。
崩れた日本の安全神話
 津波は発電所の非常用電源である燃料タンクを破壊し、原子炉の冷却機能が失われたときの緊急冷却装置が作動しなくなった。冷温停止に失敗した1号機から3号機では燃料棒の露出と被覆材の溶解、燃料棒の損傷が進行していると見られている。4号機の使用済み燃料プールでも、冷却機能が失われている。
 1号機と3号機の建屋は水素爆発で吹き飛び、4号機では火災が発生。2号機も建屋の一部に穴が開いている。大量の放射能が大気中および海中に放出された。冷却システムを動かすための外部電源の確保には成功したものの、高濃度の放射能が作業の進行を阻んでいる。原子炉がこれ以上の危機へ進むのをなんとしても食い止めなければならないが、長期化は必至の様相だ。
 原子炉は環境汚染を防ぐための装置を何重にも備えていたはずだった。しかし、それが巨大地震と巨大津波によって破られた。
 「核エネルギーは、一連の決め手の装置がうまく動作し、かなめの位置にいる人々が完全に指示を守り、サボタージュもなく、輸送中のハイジャックもなく……、革命も戦争もない場合に限って安全といえる。<神の行為>は許されない」(高木仁三郎『プルトニウムの恐怖』より。スウェーデンの物理学者H・アルフヴェンの言葉を引用)。ここでいう「神の行為」とは、天災など不可抗力のできごとのことだ。
 だがまさに、その天災によって危機が口を開いた。福島第1原発の場合、原子炉が6基も集中していること、原子炉1基ごとに独立した非常用電源を備えるシステムでなかったこと、地震の揺れとともに津波の破壊力に対する十分な設計が施されていなかったことなどが現在進行中の危機を招いた原因に挙げられている。日本の安全神話は崩れた。
韓半島危機の総点検を
 韓国は、日本への災害国際協力を強めるとともに、日本の災害と事故を他山の石として、原子力発電所の安全と危機管理体制を徹底して見直さなければならない。地震国でないとはいえ、天災はどのように起きるかわからない。地震活動が活発化している白頭山の噴火は遠くないと予測されてもいる。噴火にともない、地震や広範囲の降灰、大規模土石流の発生が予測されている。これらが北韓はもちろんのこと、韓国にも大きな被害を及ぼすことは確実だろう。
 原子炉の放射能漏れ事故によって影響を受ける地域は実に広大な地域と多くの人々、地域産業全体におよぶ。影響を受けるインフラも広範囲にわたる。長期にわたって地域全体が機能を削がれ、損失は計り知れない大きさになることが今回の巨大地震と原発事故でわかってきた。韓国や北韓で同様の災害が起きた場合、被害は半島内だけにとどまらないだろう。
 韓国は、既存の原子力発電所に起きうる事故に備えた点検を速やかに実施するべきだ。スリーマイル島原発事故ではコップ1杯の水が圧縮空気に紛れ込んだことが原因で、その後の人為的ミスが重なってチェルノブイリの2段階前まで行った。
韓国には北韓リスクも
 また、韓国は北の武力挑発に絶えず備えなければならない。ソウルは非武装地帯北側に展開する北韓軍部隊と20キロしか離れていない。原発に対する北からの攻撃をも想定し、それに対する備えに万全を期すべきだろう。
 くしくも26日、46人の若き将兵が命を落とした天安艦爆沈事件から1年が経った。わずか4カ月前の11月23日には延坪島が直接砲撃を受けた。日本の危機を注視するばかりで、自らの内在的危機を忘れてはならない。
 韓国は既存原発の放射能漏れと北韓による原発攻撃という事態を想定し、いざという場合のシミュレーションを行い、その点検を実施することが急務だ。


閉じる