サッカーアジアカップ決勝戦で決勝ゴールを決めた李忠成選手が、韓国と日本で話題になった。彼が元在日韓国人であったことが、両国メディアでクローズアップされた。日本では帰化したのに何故「李」なのか、韓国では帰化していても在日「韓国人」ではないか、という具合だ
▼李選手は試合後、韓国の取材陣に「私は韓国人でも日本人でもなく、サッカー選手としてここにいる」と話した。08年の北京五輪に出場した彼は、「在日同胞という自負心を抱いて走る。もう在日同胞という事実を隠す時代は過ぎた」として、自らを「新日本人」と呼んだ
▼昨年W杯の北京代表である本田や長友選手らは、李が韓国から日本への帰化を知っているので「チュンソン」と韓国名で呼んでいる
▼彼は「在日新1世」を宣言しているといっていい。国籍に関係なく、選手として活躍できる道を選んだ。日本と韓国での“二重差別"をバネに、選手として技量・能力を高めてきた
▼一昔前までは在日「韓国人」とか在日「朝鮮人」と言われ、国籍の範疇で捉えられてきた。3世4世が増えるに従い、韓国と朝鮮の区別が曖昧にされ、「在日」、「コリアン」という言葉に置き換えられ始めた。それは文化人でも行われた
▼李忠成はスポーツ選手としてサッカーを通じ、誰よりも生きていることを実感できるからこそ、「在日新1世」を宣言できるのだろう。だから韓国も日本社会も戸惑っている。今後も従来の見方では捉えきれない、「国」に従属・埋没せずに「国」を選択・利用する「在日」が現れるだろう。そうなることを願う。