年末、NHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」第2部が放映された。司馬遼太郎の歴史小説のドラマ化だ。産経新聞に連載された1968年から72年、まさに日本は高度成長の絶頂期にあった。小説の題材である明治の時代が、坂を駆け上がっていた時期とあいまって人気を呼んだ
▼しかしなぜ今の時期に250億円もの制作費をかけ、日清、日露戦争を題材とした小説のドラマ化なのだろうか。「明治」への賞讃、憧れなのだろうか。昨年末、菅直人首相が韓半島有事の際、在韓邦人救出のために自衛隊を派遣することに言及した。こういった発言が何の議論もなく出てしまう風土と重なり、うがって見てしまう
▼ドラマの視聴率は20%も満たないと聞く。今「坂」を駆け上がっているのは中国である。歴史小説の舞台であった韓半島を取り巻く情勢は約120年前とは大きく変わった。それは日清の逆転だ。清が共産中国に変わり、G2国家として中華帝国になった。近代化が遅れていた韓半島は分断し、北は今も清の時代と変わらず金王朝封建国家のままだ。韓国は民主主義を採用し、経済は先進国入りした
▼北は年明け後、平和攻勢をかけている。6カ国協議を主張しているが、それは核兵器保有のための時間稼ぎにすぎない。核兵器は北政権の生存条件であるため放棄しない。天安艦爆沈、延坪島砲撃事件からはっきりしたことは、北は彼らの主張とは違い「同じ民族同士」でなく韓国と「敵対関係」にあるということだ。韓国はそれを踏まえた戦略と国民的統合が必要だ。南北は今こそ120年前と異なる主体的な賢い選択と対応が求められる。