辛成澤
死に掛けている金正日が自信をもって足掻く方法は一つだけだ。地下核実験だ。成功の可能性は100%だ。たびたびやるのはそれだけ自信があるということだ。お金? それは思うほど掛からない。 1次、2次の時のように大掛りで核実験をしなくても可能であるからだ。過去のように核実験一回に「貴重な」武器級のプルトニウム(WGPu:Weapon Grade Plutonium)を5~6 kgも浪費しなくても済む。地下核実験がそれで人気がある。
金正日としては後継体制の構築作業より一連の地下核実験がもっと急務だ。スカッド(Scud)ミサイルに核弾頭を装着できないと死に切れないだろう。ノドン・ミサイルやテポドンシリーズに核弾頭を搭載してもどこへ撃つのか? 北韓が日本や米国と一戦をやる理由がないではないか? 戦争を特別に好まない大韓民国と駐韓米軍にだけ、小型の核弾頭搭載ミサイルを刻印させておけば、金正日としては今死んでも心残りがないはずだ。
だって、金正日だけだろうか。新しく権力階級として登場したテクノクラートらもスカッドミサイルにまで核弾頭を搭載すべきだということに血眼だ。要するに核弾頭の小型化・軽量化プログラムだ。北韓に小型・軽量化された核ミサイルとはまさにスカッドだ。500~700kg程度なら十分に可能だ。核実験を二回やった現在の北韓の核弾頭の重量は1000 kg前後だ。1トン以内になれば、核実験一回で最小限40~70 kgの重さを減らせる。もちろん核弾頭の重さと核実験が正比例はしないため、これから10回余り実験すれば完璧にスカッドに核弾頭を搭載できる。そして核ミサイルに求められる精密度まで確保することができる。
金正日が核実験を続けねばならない理由はあまりにも多い。まずは小型・軽量化、二番目は水素爆弾へ進むのに必要なのを確保するため、三番目は高濃縮ウラニウムでも核弾を作らねばならず、四番目は核兵器開発プログラムに飢えている国々(イラン、シリア、ミャンマー、ブラジル)に高額(?)の教習をせねばならない場合なので、一種の実力広告がまさに地下核実験だ。独裁者は生きている内もお金がたくさん要るが、死んだ後もさらに多くあってこそ後継者がそれだけ永らく安心して持ちこたえられる。
5年前、米国の金融制裁に対して北韓は第一次地下核実験で対応した。この時、米国は北韓の要求を全部呑んだ。北韓が今回も第3次地下核実験で対抗すればどうするのか? 米国は結局何もできず終わるはずだ。それでは韓国はどう対応するだろうか?
北韓がまた3回目の核実験カードを弄り始めた。金永春人民武力部長が、最近「新しく発展した方法で、核の抑制力を一層強化していく」と言うと、朝総連機関紙の朝鮮新報も「過去にも核実験が必要だと判断されれば躊躇なく断行した」と報道した。北韓は2006年10月9日と2009年5月25日の二回地下核実験を成功させた。
北韓は、1次核実験の直後、当時世界の唯一超強大国の米国が慌てる様子を見ながら「核実験カード」の効力を実感しただろう。米国は2005年9月、北韓が100ドル紙幣を精巧に偽造した「スーパーノート(super-note)」(*左写真)を作って大量流通させ、マカオ所在のBDA (バンコデルタアジア)銀行が北側の不法資金を洗濯するのに利用されたとしてBDAの口座50個余りの北韓資金2500万ドルを凍結させた。
米国はこのニセ札が北韓製という証拠を握るため、中国系の犯罪組織「三合会」とIRA (北アイルランド共和国軍事組織)に秘密要員を浸透させた。その結果2005年の夏、米国のニュージャージーとカリフォルニア州で、三合会が流通させた400万ドルのニセ札が北韓からのもので、IRAリーダーのション・ガランドが北韓産ニセ札100万ドルを英国と東ヨーロッパで流通させた証拠を確保する。米国は直ちにBDA口座の北韓資金の引出しを止めた。
ところが、BDA口座の凍結措置が米国官報に掲載された日が、あいにく北核問題解決の方向と原則を盛込んだ「9個項共同声明」に合意した「6者協議」と時期的に重なった。北側は米国が不意打ちしたと反発した。当時盧武鉉政府は北韓よりもっと興奮した。盧大統領はその年の11月慶州で開かれた韓米首脳会談で、ブッシュ大統領に「こういうのがよくもできるのだ」と糺し、ブッシュは「わが国の貨幣を偽造するのに黙っていろと言うのか」と対抗した。当時、盧政権はその年に南北首脳会談を予定したのに、BDA事態のため霧散したのだ。
北韓は2006年に入り「6者協議」をボイコットし、7年間中断していたミサイル発射実験を米国の独立記念日の7月4日に再開して大量に打ち上げ、引き続きその年の10月9日、第1次核実験を成功させた。すると今度は米国の態度が180度変わった。北韓の核実験直後、クリストファー・ヒル国務部次官補が北京に行って金桂冠北韓外務省副相に会って北韓を宥め、続いて2007年1月にベルリンで「米・北秘密接触」を経て2月13日の6者協議でBDA口座に凍結された北側資金2500万ドルを解除した。BDA攻防で攻勢をかけた側は、米・北ミサイル合意を破って核実験までやった北韓で、北韓はお金も無事返してもらった。これが「BDA制裁」の顛末だ。
それにも、韓・米政府は最近、「BDA制裁」を「成功的モデル」と言い、再び適用する方案を多角的に模索し始めた。この前ソウルを訪ねたヒラリー・クリントン国務長官は、「BDAを通じてわれわれは望んだ結果を得た」とまで言及した。政府関係者は、「北韓が、BDA当時血が凍りつくと言った」と伝えた。だが、この言葉も、南北接触で韓国政府代表が北側に「金融は経済の血管のようなものなだから制裁を受ければ心臓が止まることもあり得る」と話したのを、北韓の金桂冠代表がそのままコピーして米国に使ったのだ。
韓国政府一角の反応を見ると、まるで「BDA式制裁を、北韓の門を開閉する万能鍵」と見做すようだ。北韓は去る4月の死んだ金日成の誕生日パーティーに60億ウォンをかけて花火を打ち上げ、昨年一年間ミサイルや核実験に7億ドルを注ぎ込んだ。BDAで凍結された2500万ドルが北韓経済で少なくない金額であることは事実だが、そのため北韓が屈服するか滅びる可能性はない。当面「ガム」が噛めず少し不便であるだけだ。
米国は早晩「BDA制裁」を一層発展させた対北金融制裁措置を講じるといったがまだ静かだ。これに北韓は3回目の核実験で対抗するという。今回は専門家たちも予想できない北韓独特の方法で出てくる可能性がある。「科学的」検証を非常に楽しむ私たちを慌てさせる気がする。核実験と同時に金正日は、「ウラニウム核弾の感じはどうか」、「水素爆弾もたいしたことでないな」、「北朝鮮科学者たちだけが可能な超ミニ核弾頭まで成功させたな」など、韓・米を矢も盾もたまらずにする可能性もある。韓国には悪夢のシナリオだ。こういう状況になれば、韓国政府はどう対処するだろうか? (週間韓国)
辛成澤(米国モントレー国際学大学教教授)
1974年陸軍士官学校を卒業(電子工学学士)。米空軍技術学校電子精密測定過程を終了(電子精密測定士)。1983年ワシントン大学大学院を卒業(核工学修士)。1989年米国レンスラー大学大学院卒業(核工学博士)。予備役大領として韓国国防研究院の責任研究委員、国防部政策企画官室のWMD専門委員を務める。現在の米国モントレー国際学大学教授(WMD非拡散)。