3歳で漢詩をすらすら書き、英仏独伊の4カ国語を自由に操り、政治、経済、文化、歴史に精通した天才。
金正日の後継者に決まった金正恩に対する世襲作業が本格化している。一度も軍服に袖を通したことがない金正恩に「朝鮮人民軍大将」の称号を与え、党の軍事路線を総括する中央軍事委員会副委員長に就任させたのに続き、最近では金正恩の偶像化を進め、3代世襲路線を「華々しく」演出している。
だが、金正恩体制の確立に懐疑的な見方を示す専門家は少なくない。
季刊誌「時代精神」の編集委員、金永煥氏は先週、北韓民主化ネットワークの政策セミナーで、「金正恩体制が順調に構築される可能性は10%未満」と指摘。その背景として叔母の金敬姫氏(党政治局員)以外に信頼できる世襲後見人がおらず、金正日の死後、金正恩が権力と権威を維持できるかは非常に疑わしいと強調した。
金正日は1974年に後継者に内定され、1980年10月の党大会で「親愛なる指導者」として正式デビューした。その間、崔賢・元人民武力相ら金日成の側近たちであるパルチザン元老たちを味方につけるなど、着実に後継者としての道を歩んできたと言える。
しかし、金正恩は後継者に任命されてから、わずか10日後に表舞台に姿を現し、「王子」の座に就こうとしている。
これから急ピッチで後継正当化や偶像化を進めるだろうが、約6年間にわたり、権力基盤を整え、金日成の死去まで14年間、ナンバー2として内政の中心にいた金正日に比べれば、金正恩は権力を学ぶ時間も、基盤を整える余裕もないように見える。
統一研究院・北韓研究室の全賢俊上級研究員は、「金正恩の能力は検証されたと言えず、世襲に対する正当性が保障されるかは未知数だ」と分析している。
金正恩に後継者として胸を張れる正当性がないことも、3代世襲への悲観的な見方を広げている。
金正恩の母、高英姫は金正日の内縁の妻で、在日韓国人。さらに金正恩自身が長男ではなく三男であることも「革命伝統」にはふさわしくない。
外交通商部の国際安保大使の南柱洪氏は、北韓内部で、正当性の混乱とリーダーシップのかっ藤が長期化し、急変事態が不可避だと指摘。デイリーNKの孫光柱編集局長も、北韓の3代世襲体制がスムーズに進み、混乱なくソフトランディングするのは現実的に厳しいとの見方を示した。
このように金正恩の後継体制に悲観的な見方が支配的であるなか、これらとは正反対の意見もある。
韓国の京郷新聞は13日付コラムで、「金正恩が何の準備もなく、一夜にして後継者になったわけではない。金正日はそんな下手な冒険をしない」と主張し、北韓は世襲に必要なイデオロギー、政治制度、道徳観、生活習慣を整えているとし、北韓の絶対権力はすでに王朝をまねていると指摘。
どちらにせよ、金正恩が後継者として北韓の権力基盤を確立できるかどうかは「まだ何とも言えない」(統一部関係者)状況だ。
確かなのは、韓国を含む国際社会が当面、「金正恩の北韓」と向き合っていかなければならないことだろう。権力の世襲が着々と進む北韓の動向に、しばらく目が離せない状況になりそうだ。