北の核開発再開、ウラン濃縮 試験的生産の可能性も

原点から対応戦略見直す時期
日付: 2010年10月14日 00時00分

 米シンクタンク「科学・国際安全保障研究所」(ISIS)は先月末、北韓北西部にある寧辺の核施設付近で新たな建物の工事が始まっていることが確認されたと発表した。
 同所にあった黒鉛減速炉の冷却塔は2008年6月に核施設の無能力化措置の一環として爆破されており、工事開始は核開発再開への兆候との指摘が多い。韓国外交通商部も先週、6カ国協議などの関係国と連携して注視していることを明らかにした。
 さらにISISは、北韓のウラン濃縮計画が「実験」から「試験的生産」へ拡大した可能性があるとの報告を発表。今後、北韓の核をめぐる交渉が再開された場合は、ウラン濃縮計画の破棄に優先的に取り組むべきだとも警告した。
 北韓は以前から、高濃縮ウランを使った核爆弾の開発を進めているとの疑惑が指摘されてきたが、6カ国協議ではプルトニウム関連の議論が中心となり、濃縮ウラン疑惑の解明はほとんど進展していなかったのが実情だ。
 北韓は昨年9月に、「ウラン濃縮実験に成功し、完了段階に入った」との書簡を国連安保理に提出している。ウラン濃縮に成功したとすれば、核兵器開発の手段だけでなく、核技術の拡散の脅威も増す。
 北韓がこれだけ核開発を活発に進めているのは、今後6カ国協議で核放棄の見返りとして、経済援助や安全保障上の確約など、これまで以上に対価をつり上げる「大がかりな取引」をするためだとする見方もある。過去にも、同じような核開発計画を進めていた国々が、似たような報酬を得て核兵器を手放してきた。だが、北韓はその例外となる可能性が高い。
 韓国と北韓は朝鮮戦争以来、ライバル企業のように経済力や軍事力などを競い合ってきたが、1970年代から格差は広がり、今では比べものにならない。
 韓国の輝かしい繁栄は北韓の正当性に、大きな疑問を投げかけていることになる。そんな北韓が唯一韓国に自慢でき、存在意義としているのが「核」なのだ。どんなに大きな見返りを得るにしても、簡単にあきらめるわけにはいかないだろう。その上、韓日米が北韓に対し、強い姿勢を続けており、6カ国協議は再開されても難関を迎えることになりそうだ。
 6カ国協議は2008年12月以来、中断されている。その間、北韓は2009年にミサイル発射実験と2度目の核実験を強行。さらにもう一つの核計画、濃縮ウラン計画も進めている。
 北韓の朴吉淵外務次官(写真)は先月末、国連総会演説で「我々は核抑止力を決して放棄せず、一層強化しなければならない」と述べ、核開発を続ける姿勢を改めて示した。これは北韓が権力の3代世襲を公にしてから、国際社会に向け発した第一声だ。後継者に決まった金正恩の体制では、改革・開放や非核化が推進されるとした一部の期待は水の泡となった。
 国家安保戦略研究所の南成旭所長は「北韓が非核化に応じない場合、ソフトランディングできないというメッセージを関連国が強く送るべきだ」と提案している。
 とはいえ、北韓が核を手放す可能性はどんどん小さくなっている。北韓の核開発をめぐる対応戦略は原点から見直される時期に来ている。


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