趙甲済
「ヘーゲル曰く、世界史の大事件と人物らは違う姿でまた出現すると言った。彼は一つ付け加えるのを忘れた;初めては悲劇で、次は喜劇として。」
マルクスのこの名言は、「金正日への初めての世襲は悲劇で、金正恩の二度目の世襲試みは喜劇的」という話が作れる。日本共産党機関紙・赤旗の平壌特派員を務めた萩原遼氏は、数年前筆者にこう話した。「金正日は真の共産主義者の敵だ。彼こそ真のファッショであるためだ」。彼はこう付け加えた。「金正日は雪だるまだ。煖炉(火鉢)に近づけば溶けてしまう」。
体制を開放して真実の温みに触れると溶けてしまうのが金正日政権だという話だった。
黄長燁前労働党秘書は韓国にきてこう話した。「南・北韓の対決は資本主義と社会主義の対決でなく資本主義と封建主義の対決だ」。拉致された後金正日の夜のパーティーにしばしば呼ばれた映画監督の申相玉氏(死亡)は近くで目撃した北韓支配層の行態を「馬賊団」と要約した。
金正日は北韓労働党代表者会の直前に20代の若者と60代後半の婆さんの軍経歴のない血族を大将に任命した。金正日の先軍政治というのが「餓鬼大将」を量産する兵隊ごっこに変わった。歴史のゴミの山に入るべきだった守旧反動集団の喜劇的3代世襲試みを最も鋭く批判せねばならない義務のある人々は、社会主義的理想を持ったと自任する人々であるはずだ。韓国と日本の左派、そして朝総聯だ。彼らの批判は、彼ら自身の潔癖の証明と生存のためにも必要だ。
小説「1984」を通じて北韓体制のような怪物の登場を予言したジョージ・オーウェルは、狂信と戦う内に狂信徒にならないためには「頭を使わねばならない」と忠告した。金日成-金正日父子は戦争と独裁で700万人の人命を犠牲にさせた責任者だ。生き残った北韓住民も正常でない。北韓人の平均寿命は同族の南韓人より15年も短く、男の平均身長は14cmが低い。北韓で肥った人々はほとんどが労働党の貴族たちだ。
韓国はこういう怪物集団を相手に命をかけた生存闘争をしながらも怪物に似ず、人権を重視する民主主義を発展させた。韓国民主主義の2大建設者である李承晩と朴正煕の賢い大戦略が成功したのだ。李承晩が作った韓米同盟と朴正煕が作った韓日友好関係は、韓国を自由と繁栄、そして合理精神の方に立つようにさせた。金日成は、韓国が韓米同盟と韓日友好関係という二つの緒のついた冠をかぶっていると比喩した。これから中国、北韓政権、南韓の従北勢力は、「韓国の中立化」を持ち出し韓米同盟と韓日友好関係を解体する方向へ力を合わせるだろう。
英国の歴史学者アーノルドJ.トインビーは、「歴史の研究」という大作で、文明(民族と国家と文化と社会)の興亡を挑戦と応戦の過程だと説明した。ある文明が挑戦を克服すれば新しい次元の発展を遂げ、また他の挑戦に直面する。この挑戦を跳ね返せば、また一段発展する。螺旋形式の発展過程を経てある瞬間挑戦への応戦に失敗する場合が生ずる。再応戦にも失敗する。三回目、四回目応戦も失敗する。こうなれば文明の衰亡が始まり、この大勢は何人かの英雄的努力でも取り戻せないと言った。
北韓政権は1970年代後半から衰亡の悪循環の中に陥った。人民の生活水準を向上させようとした西側の資本導入の試みは、後継者に指名された金正日の金日成神格化キャンペーンに潰された。1980年代、全斗煥政府がソウル・オリンピックを推進するや北はミャンマーのラングンテロおよび大韓航空機テロで応戦したが犯人らが皆捕まって国際社会の制裁を招いた。
盧泰愚政府がソウル・オリンピックの成功と共産圏崩壊を活用、ソ連-中国-東欧共産国家と修交する北方政策を展開したことに北韓政権は原爆開発で応戦したが、1990年代後半の大飢饉を招いた。南の挑戦に金正日は改革開放で応戦せねばならなかったのに、自閉的かつ自殺的の選択をした。体制維持に必要な約500万人だけい食糧を与え、残り1600万人には配給を断ち数百万人の餓死者を出した。
住民は生き残るため市場を作った。この市場が拡大され、今は労働党に代わって住民を食べさせる。配給に依存して生存する層は約20%、市場を通じて生きる人々は80%だ。市場勢力の拡大に危機感を感じた金正日は昨年11月貨幣改革で市場を無くそうとしたが副作用だけを出して失敗した。
市場は人民たちを鍛練させ、教育させ、覚醒させる。人民らが目覚めるほど金正日権力は弱くなっている。この大勢が北韓体制の性格を根本的に変えつつある。そうした中で病気になった金正日は焦って三男の金正恩を後継者にしようとする。この試みは成功できない。後見人の金正日自身の健康が悪く、金正恩の権威が全無で、市場勢力が作り出す世論が世襲に否定的であるはずで、権力闘争が起きるからだ。お金、人権、真実など資源と手段の多い韓国側が金正恩反対勢力を支援して北韓を揺さぶることもできる。
北韓政権は1953年に終わったスターリン体制が57年間延命しているケースだ。スターリン死後ソ連で起きた変化がこれから北韓で圧縮的に起きるはずで、一つの方向へ収斂するだろう。それは偶像崇拝体制の崩壊、対南革命路線の放棄、体制の開放などだ。この過程で金正日一族の生存を保障するのは非常に難しい。金日成と金正日が積んだ悪業の重さで金正恩は圧死するかも知れない。歴史を変える最も恐ろしい力は犠牲になった人々の血であり、復讐心だ。良心に目覚めた北韓住民が外部の助けを得て3代世襲試みを挫折させる時、韓半島自由統一の初めてドアが開けられる。