趙甲濟講演「前進する韓国・後退する北韓」

現状打破で統一する勇気と犠牲心が必要
日付: 2010年09月29日 00時00分

 韓国の代表的保守論客で、「月刊朝鮮」の元編集長の趙甲濟氏が16日、東京の韓国中央会館で講演会(主催・統一日報社)を行った。講演のテーマは、自由統一で韓国を一流国家にというもので、約150人が趙氏の講演に聞き入った。以下、講演内容をまとめた。 (溝口恭平)


 

 2000年の民族史において、韓半島には3つのターニングポイントがありました。

 まず、7世紀の新羅・唐連合軍による統一。当時唐は韓半島侵略を狙っていましたが、新羅は巧みな外交を展開し、それを阻止しました。韓国史で大きな外交的成功は2回ありました。一つは新羅で、もう一つは李承晩が結んだ韓米同盟です。新羅の統一までの段階で周辺国はどれも戦争を経験しましたが、韓半島が統一されたことにより、それぞれが安定したのです。
 その後19世紀末、西欧列強の東進により、東アジアはもう一度歴史の渦に巻き込まれました。その後150年にわたって、周辺国は戦争を経験しました。南北も休戦状態という緊張下に置かれています。

 しかし今、東アジアには大きな変革の兆しが押し寄せています。新羅による統一後に300年の平和が続いた「東アジアの黄金の時代」がありましたが、韓国が今、自由民主主義と市場経済で北韓と統一すれば、東アジアの平和と共同繁栄が保証されます。65年間分断状態の南北が、北韓の崩壊と韓国主導の自由統一というターニングポイントに向かっているのです。
 そのために周辺国はさまざまな選択をしなければならないでしょう。韓半島の変化に、現状打破という形で対応しなければならないのです。

 韓国は4段階の成長を経てきました。自由民主主義と市場主義を掲げた李承晩大統領による建国、共産主義南侵を防いだ護国、その後結ばれた韓米同盟の下、朴正熙大統領による産業化があり、同時期に民主化も成し遂げました。短期間で4段階を踏んだため、戦争や光州事件などの悲劇もありました。偉大な大統領が非業の死を遂げたこともありました。
 対照的にこの60年、世界でもっとも静かだったのが北韓です。韓国は痛みを経験したから今があるのです。
 韓国の国家目標は2つあります。自由統一の実現と、北韓に暮らす2300万人の奴隷の解放です。韓半島に7000万人規模の民族集団を作る。一流の国で民族が幸せに暮らすのです。

 そのためには自由統一が必要です。自由統一なくして一流国家も幸せな生活もないのです。保守勢力が自由統一勢力にならなければいけないのです。強く、自由で、繁栄して、統一された韓半島。これが韓国の目指す姿です。
 韓国の4段階の成功を導いた要因は4つあります。まずは自由民主主義の選択と韓米同盟の存在です。韓米同盟により自国を守る能力を手に入れ、技術革新や民主主義の実習もできました。3つめは勤勉な民族性。そして偉大な指導者です。李承晩から盧泰愚まではいい指導者だと思います。その後の4人は議論すべきことでしょう。

 この4つをキープした上で、今ひとつの問題点に立ち向かわなければいけません。
 英国の歴史家トーマス・カーライルは、「人間は逆境には勝てるが豊かさに打ち勝てる者はいない」といいました。今日の大韓民国は、豊かさとの戦いで負けつつあります。科学的・経済的には成長しましたが、国民としての教養、良識、指導力に大きな問題を抱えています。北韓を吸収して統一する上で、韓国の国力は足りています。しかし、統一をする勇気や犠牲心は足りていません。何があっても自由統一をするのだという人は国民の30%しかいません。

 前進する韓国と後退する北韓の開きは65年間で大きくなりましたが、これが固定化、あるいは拡大していくと統一は困難になります。


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