北韓、集団指導体制模索か(上)

44年ぶりの党代表者会議 
日付: 2010年09月01日 00時00分

 北韓の最高権力者金正日が8月26日未明、電撃的に中国を訪問した。金正日の訪中は3カ月ぶり。最高権力者になって以来初の年2回訪中という事実は、北韓内部に何らかの切迫した状況があると推測するに十分だ。金正日訪中は、北韓政府が「9月上旬」に開くという党代表者会議と深い連関性があるものといえる。金正日は党代表者会議で何を得ようとしているのだろうか。(ソウル=李民晧)

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 「北韓は先週から数回にわたって中国産F3を100機、高級外車とジープ、大型乗合車200台以上を持っていった」
 4月14日付の朝鮮日報は、北韓政府が金日成の誕生日である太陽節(4月15日)に合わせて、「民心収集用」として自動車などを輸入したとの分析を出した。分析はどれほど正確なものなのだろうか。

 ある対北消息筋は8月27日、北韓が過去数年間、国際社会の制裁である対北ぜいたく品輸出禁止の網をくぐってドイツ製高級車を継続的に輸入してきたと明かした。その上で「金正日が党代表者会議参加者300人のために贈り物を準備したのだろう」と伝えた。
 党代表者会議の下準備はかなり前から行われてきたという意味で、事実なら緻密な脚本に基づいて進行されているということになる。

 北韓労働党が党代表者会議を公式に発表したのは6月23日。それからというもの、住民を対象に党代表者会議の大々的な宣伝活動をしてきたというのが対北消息筋の証言だ。
 朝鮮中央通信は8月26日、「朝鮮労働党代表者会議を控え、最近市・郡の党大会が進行された」と、本格的な日程に突入したことを報じた。今回の党代表者会議は、金正日が実権を握ってから初めて行われる政治行事といえる。

政敵排除と党の安定化

 代表者会議が開かれたのは、金日成時代の1958年3月と66年10月の2度だけだ。金日成は2度の会議で労働党の正常化を旗印に掲げた。しかし、実際には政敵の排除と独裁体制の基盤固めに活用した。

 今回金正日が、44年ぶりに金日成時代の“遺物"のような行事を行う意図も、父である金日成の行動と無関係ではないという分析が支配的だ。党代表者会議を、危険因子排除に利用した金日成のように、明らかな狙いがあるというのだ。
 金正日が党代表者会議を招集する目的は2つある。3男キム・ジョンウンへの世襲の基盤を作るためと、体制整備を通じた内部権力基盤の安定化だ。

 現在北韓は、政情不安と経済危機、後継問題など、複合的な悪材料に苦しんでいる。
 中でも最大の危機として受け取られているのが政情不安。統制機関である労働党が民心を得られずにいるからだ。
 昨年11月末の貨幤改革で甚大な経済的被害を被った北韓エリート層は金正日に背を向け、闇市場の商人らは、警察に相当する保衛部員の存在を無視するかのように公然と金正日への不満を漏らすことが日常化している。

 北韓政府は、政情不安の理由は1995年に金正日が始めた「先軍政治」にあるものと見ている。軍を優先する政策により、党の機能が急速に弱まったと受け取られているのだ。
 政情が不安定なまま金正日が後継者を立てたところで、自ら体制崩壊を早める結果になる危険性があるといっていい。


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