北韓の金正日総書記が8月26日、急遽中国を訪問した。今年5月の訪中からわずか3カ月。年2回の訪中は過去に例がない。44年ぶりの労働党代表者会議を控え、後継体制固めのための“お伺い"と、中国からの経済支援・協力の獲得が話し合われたと見られる。
金正日の訪中により、にわかに韓半島が外交の舞台となった。
ジミー・カーター元米国大統領が平壌滞在中の訪中は、高い関心を集めた。同じ時刻、6カ国協議再開問題をめぐり、北韓当局と協議してきた中国の武大偉・韓半島事務特別代表はソウルにいた。中国を介した南北の外交協議が同時に行われたといえる。
北韓は9月7日に党代表者会議を予定しており、その後9日に建国記念日、10月10日に党創建65周年を迎える。電撃訪中は、後継問題についての重大決定を前に、中国と協議し内諾を得ると同時に、親密さをアピールすることが目的と思われる。
金正日は慈江道満浦から中国の集安に抜ける「吉林省ルート」を初めて利用した。2000年以降金正日は中国を5回訪問しているが、毎回新義州から丹東を経由するルートだった。
金正日一行は26日、吉林市にある毓文いくぶん中学を初めて訪れた。同中学は金日成が革命運動を学んだ場所とされている。一行はその後、抗日闘争の史跡、北山公園も訪問している。
これら“聖地巡礼"的な吉林訪問は、後継者といわれるジョンウン氏の同行が推測される根拠の一つだ。後継者としての正統性を持たせるとともに、中国側に暗黙の同意と支持を求めていると読み取れる。
5月の総書記訪中では、天安艦爆沈事件の対応が優先し、後継体制の安定に不可欠な中国からの経済支援や投資は引き出せなかった。
北韓は9月に行われる党代表者会議で「金ジョンウン後継者体制」を何らかの形で発表し、2012年に定められている「強盛大国の門」を開こうとしていると見られる。
そのためには経済難をある程度解消するのが急務で、何よりも中国からの支援の確約が求められる。食糧事情の悪化が伝えられるなか、特に新義州など北西部で発生した水害も経済悪化に追い討ちをかけている。
中国は6カ国協議再開を強く望んでおり、北韓も天安爆沈事件以降、会議の再開を提案している。しかし北韓は韓米に対し、前向きかつより具体的な提案をせざるを得ず、中国との協議が必要だ。中国側もそれを要求しているだろう。
北韓は、8月に入り海外ニュース番組を放映し始め、「足を地につけ目を世界に向けよう」というスローガンを今年の春以降唱えているとされている。
北韓では、9月初めに行われる党代表者会議とその後に向け、大きな転換が起きようとしている。