15日付で本紙が行った識者アンケートの結果、回答を得た識者の9割近くが10年以内の南北統一を予想した。そのうち7割が、統一の引き金になるのは金正日の死にともなう北体制の崩壊であると回答。7割の識者が、後継者への権力継承作業は成功しないと見ているということだ。今回はアンケート結果をもとに、金正日死後から統一へのシナリオに焦点を絞って予想してみた。
(ソウル=李民晧)
北の体制崩壊が引き金
北韓の最高権力者金正日は、08年の夏から脳疾患など、健康面に異常があると知られている。各分析に程度の差こそあれ、健康不安は周知の事実だ。
5月に訪中した金正日は、一時期に比べて相当痩せており、髪の毛も目立って少なくなっていた。病で倒れた後遺症からか、片足を引きずるように歩いていたことも明らかになった。
健康に不安のある金正日は、3男のジョンウン氏への後継作業を急いでいるというのが、情報当局の分析や、脱北者の証言からわかっている。
金正日は権力の委譲に成功するのか? 「順調に継承される」と答えた専門家は30%。「失敗」の70%を大きく下回った。70%の専門家は、3代世襲の成功例は少ない上、北韓住民が世襲に反発する可能性が高いと分析している。
ではポスト金正日体制はどうなるのか。興味深いことに、専門家の70%が「急激に崩壊する」と予想している。原因として挙げられた選択肢のうち、上位(複数回答可)は「後継の失敗」(67%)と「北韓住民の蜂起」(14%)だった。元韓国陸軍中将で、現在韓国安保問題研究所の理事長を務める金熙相氏は「さまざまな要因が複合的に作用して崩壊する」と予測した。
今回のアンケートでもっとも衝撃的な結果が表れた質問は「韓国は北韓の崩壊に準備ができているのか」というものだった。専門家の55%が「いいえ」と答え、「はい」(20%)を大きく上回った。
その他の意見として出たのは「準備しているが、不十分」(金熙相)、「政府と国民の決意が不足している」(匿名希望の日本人記者)などだった。
現在の韓国 「準備不足」
では、専門家の過半数が「準備不足」と指摘した北韓の崩壊に対する韓国の準備は、どのように進めればいいのだろうか。専門家はまず、「韓米同盟強化」(26%)を指摘。次いで「北韓の核ボタンを確保するための対策作り」(23%)と「統一資金の確保」(20%)、「脱北者難民施設の構築」(13%)などだった。
脱北者で、現・朝鮮日報記者の姜哲煥氏は「北韓住民を韓国人に育てる戦略が必要だ」と話す。外交官出身の日本人識者は「韓国政府の統一基本方針の宣言と(北韓領土に対する)軍事的行動が必要だ」との意見を述べた。
南北統一の時期を予想してもらう質問では「5年以内」(45%)と「5~10年」(40%)の合計が85%になった。やはり多くの専門家が金正日体制の崩壊は間近に迫っており、それにともない最大の統一チャンスがめぐってくるとの見方を示したといっていい。
金東吉・延世大名誉教授は「8月15日の解放が急にやってきたように、統一もある日突然やってくる」と話す。それを実現するためには「私たちに自由民主主義を守る意志がなければならない」とのことだ。
金錫友・21世紀国家発展研究院院長は「北韓の失敗した政権は、金正日死後に崩れる可能性が高い」と予測する。半面、『韓国論壇』の李度衡発行人は「韓国指導者の腐敗と分裂という悪性因子を取り除くことができなければ、自由民主統一は期待できない」と断言する。場合によっては「韓国が先に崩壊することもありうる」と、悲観的な分析をしている。
北韓の崩壊で最大の利益を得る国を問う質問では「韓国」(74%)という回答が圧倒的に多かった。一方、北韓の友邦国であり、第一の経済交易国である中国と答えた識者は9%にすぎなかった。