【対談】洪性国×金錫友 ― 近づく変化への足音①

統一のために準備すべきは何か
日付: 2010年08月15日 00時00分

 38度線。私たちは韓国の領土を南北に割るこの線の存在を当然のように受け入れがちだ。分断体制を打破するにはどうすればいいのか。北韓の体制に変化は起きないのか、統一のために準備すべきは何か。最近、北韓急変後の対処法をまとめた『統一は早いほど良い』を上梓(共著)した金錫友・21世紀国家発展研究院院長と洪性国・統一教育院教授の両名に聞いた。(聞き手=李民晧)

 天安艦爆沈事件の前後

 ―初の軍艦爆沈という形の挑発。北韓が自らを追い込みかねない事件を起こした理由は。

 金 「韓国政府に対して太陽政策時代に戻せという脅迫だったのだろう。米国が9・11前後に変わったように、天安爆沈は韓国社会の対北認識を劇的に変えるきっかけになった」

  「その前に北韓内部でさまざまな変化があった。金正日の健康異常と貨幣改革、150日戦闘などだ。すべてが緩みきった社会体制の引き締めを目的としていた。その結果、後継作業の基礎を固めるという政治的狙いだった」

―天安爆沈事件と貨幣改革などとの関係は。
金錫友

  「改革や戦闘には経済政策としての思考も住民に対する思いやりもなかった。まず貨幣改革。インフレ防止を謳ったものの、北韓住民の最後の命綱である『農民市場』を破壊してしまった。住民の不満は極限まで高まった。金正日としてはその不満を鎮めるため、何かに不満の矛先を向けさせるしかなかった。その結果が天安爆沈事件だという蓋然性は高い」

  「天安艦事件は、韓国に向かって発せられた『無条件で(支援を)出せ』という脅迫ではないかと思う。韓国社会の一部では、平和はカネで買えるという人々がいるが、彼らに賛同せよという金正日からのメッセージだ」

―北韓が天安艦事件を起こした理由として、南北首脳会談推進協議の決裂が挙げられているが。

  「安易に会談までこぎつけるわけはなかった。北は首脳会談を餌に韓国から支援を引き出そうと考えたのだろうが、韓国側は核放棄という明確な前提条件が満たされないまま、会談に応じるわけにはいかなかった」

―この1、2年に北韓政権が試みた政策は、すべて失敗した。その原因は何か。

  「北韓政権は、ベルリンの壁が崩れて東欧の共産主義国家が凋落していく姿を見て、『外部の思潮流入で亡びた』と結論づけた。そして徹底的な封鎖政策を取った。北韓経済を再生させる唯一の道は改革・開放だが、絶対的な首領独裁と世襲体制を維持するためにも改革・開放はだめだと考えた。実際、金正日の一言は、憲法や党綱領よりも上にあるではないか。経済活動の根本にある住民が餓死する中でも核やミサイルといった大量破壊兵器の開発を優先してきた。だから90年代からの20年間、経済は右肩下がりになっているのだ」

海底から引き揚げられた天安艦の一部。多国籍調査チームは、沈没原因を北韓の魚雷攻撃であると結論付けたが、北韓は「韓国の自作自演」と一貫して反論している
  「今は90年代の『苦難の行軍』の時期と同じだ。最悪の状態が長く続いているから、初めからそうであったような錯覚に陥っているだけだ。金正日がトップになってからというもの、北韓ではこれといった経済政策がなかった。かつての『7・1措置』や今回の『貨幣改革』、『150日戦闘』が経済措置だと言われたが、実は住民の懐から富を脅して奪うためのものだった。北韓は物資が不足している。物資供給を増やさなければならないのに、奇襲的に貨幣改革だけを断行した。貨幣価値を暴落させてまで住民の富を奪った統治者が、自らモラトリアム(支払い猶予)を宣言することは当然なことだ」

  「北韓が外国の投資を目的に設立した大豊グループも虚構の可能性がある。最近会った中国人の知人の話では、大豊グループの朴哲洙という人物は、新義州特区のトップになった直後に詐欺で逮捕された楊斌と比較しても格が低い。どんな外国投資家がそんな人物を信じ北に投資するのか」

―最近の北韓の動向は。

  「あまりにも統制がひどくなり、何もかもが大変だと聞いている。党幹部を含めた核心階層ですら、金正日に対して不満を持つ人が多くなったという。貨幤改革で最大の損害を被った人々こそ、核心階層の人たちだからだ」

  「洪教授と同じような話しか聞かない。下層部に不満分子が多かったのは昔の話で、特に最近は上層部からも不満が出ているという」


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