【対談】 韓半島の真の解放 今こそ我々の手で ③― 金暎勳×洪熒

苦難と経済発展を越え 整理と再出発を
日付: 2010年08月15日 00時00分

―6・25戦争で韓国が得たものは。

  「まず、自由を護る戦いで鍛えられた歴史上最強の軍隊だ。軍隊は道路や橋の建設をはじめ車の運転まで、近代化に必要な技術や管理能力を米国から習得した」

  「軍事文化が韓国社会を引っ張りながら、韓国は急速な発展を遂げた。国民国家での国防や愛国心を訓練され体験した人々は、李承晩、朴正熙大統領に導かれて近代化・産業化に邁進した」

  「強い軍隊だけでなく最良の韓米同盟も得た。建国62年のうち、半分近い30年は李承晩・朴正熙のオートクラシー(独裁)だったと言われるが、今のように5年ごとに凡人・匹夫の大統領が変わっていたら、今日の韓国はなかった」

  「その半面、精神文化は期待したほど発展しなかった。そこから生じた不調和に、今の韓国社会の諸問題は起因する。韓国社会の最大の弱点は、まず『虚勢文化』。多くの人々が外面を飾ることばかりに気をとられている。2つ目は団結力の欠如、3つ目は自意識過剰だ。そして性急な性格。静かに考えない。教育やマスコミにも問題がある。国民と政治指導者たちは、このような点を深く反省しなければならない。でなければ、理念・思想・民族性・国民意識はまともに形成されない」

  「韓国はどうして左傾化したのか。韓国一の論客・趙甲済氏は最近、『われわれは貧しさとの戦いでは勝ったが、豊かさとの戦いで負けている』と喝破した。国連加盟国の3分の2は20世紀に建国されたが、韓国はもっとも成功した国なのに、親北左翼らは失敗国家だと主張する。いかなる基準から見ても、韓国は短期間で非常に効率的に圧縮的な経済成長を成し遂げた。だが、皮肉にも子供が栄養を取るだけでは大人になれないように、韓国は精神面が未熟なことを内外にさらけ出している。物質的『圧縮成長』は可能だが、精神の成長は容易でない。韓国は80年代、史上初めての中産層が形成されたが、精神的中産層形成への機会は掴めなかった。理由は盧泰愚から始まる第6共和国だ。韓国は88年のソウル五輪以降、未来より過去との戦いに明け暮れた。李承晩や朴正熙が悪かった、親日派を清算せよ、などと後ろ向きのまま進み、23年間がすぎた」

  「そのすべての背後に北韓労働党による工作がある。労働党が韓国の誰に指令を下しているか全貌が分からないのが最大の問題だ」

  「第6共和国からの韓国は、発展ではなく反動の時代に入った。第6共和国は韓国社会を大衆迎合主義に後退させている。貧しさとの戦いでは勝ったが、ビジョンと目標を失っている。先進国になるためには確固とした価値観を持たなければならない。国としてはもちろん、国民一人ひとりも持たねばならない」

  「貧困には3段階がある。1番目は衣食住。2番目は文化的活動。子どもに高等教育を受けさせたり、音楽会に行ったりなどだ。3番目は精神や価値観。韓国は3番目の貧困が解決されていない。言い換えれば、未来指向的な思想体系ができていない。国民の80%が第3の貧困状態にあるではないか」

―解決策は。

  「個人の自覚を呼びかけると同時に、国家的システムを作るしかない。韓国は平壌側の思惑どおり、社会も政府も価値観が病んでいる。国家のシステムを直すのは、優れた指導者が数人いれば可能だが、個人の価値観の問題は容易でない。特に、頑固な人々を自覚させるのはほとんど不可能だ。ただ、韓国人・韓国社会を動かす方法がないわけではない。興に乗せるのだ。素材は北韓解放と統一だ。100年間植民地状態の北韓解放が、2000万人の同族を解放する偉大な事業だと自覚できれば、目標ができる。興に乗る。何とかして自覚さえさせれば、人間は生き方が変わる」

  「高麗大学の北韓学科を卒業したある学生に統一に対する考えを聞いたところ、今は統一をする必要はないと思うとの答えが返ってきた。韓国の若者は統一に対する信念がないのではないか」

  「韓国の『北韓学』教授のほとんどは北韓シンパだ。学生には統一すれば北韓住民を養うため負担が増えると、統一を望まないようにしている。韓国社会が直面している退行的現状を総合的に解決するには北韓を解放しなければならない。北韓解放こそが共栄の道だ。何より若者の雇用と経済成長につながるはずだ」

  「それはほとんど不可能だと思う。まず韓半島で第二の6・25戦争が勃発する可能性を排除できない。韓国は、8・15を自由民主主義の理念を掲げて民主国家を建国した記念日として記憶し、新たに第2の建国史を歩んでいけばいい」

  「統一は当然困難な課題だ。だが、有機体は成長しないと死ぬ。韓国は今よりはるかに厳しい条件でも活路を開いてきた。韓国が今まで成就したものは北韓解放のためのもので、北韓をわれわれが解放しないと今日までのすべての成果は最終的に意味を失う。統一は北だけでなく南自身も救うものだ。北の解放はできるかどうかの問題でなく、やるかどうかの問題だと考えたい」

◆キム・ヨンフン(写真右)=69年に渡米。韓半島平和統一委員会委員長、米アジア平和安全会議議長などを歴任。駐ワシントン統一日報論説委員

◆ホン・ヒョン(写真左)=48年、ソウル出身。陸軍士官学校卒。ベトナム参戦後、国防部に務め、03年に退官。現・統一日報論説委員

 


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