【社説】戦時作戦統制権の共同行使を温存せよ

日付: 2010年07月07日 20時21分

 韓米両国間の韓半島有事における集団安全保障措置であり、共同作戦装置である韓米連合軍司令部の解体と韓国陸海空3軍の戦時作戦統制権の韓国返還が、予定されていた2012年4月から15年12月に延期された。李明博大統領とオバマ米大統領が先月26日、トロントでの首脳会談で合意した。戦時作戦統制権の移譲延期は、韓半島情勢の流動を受け、駐韓米軍のプレゼンスと韓米同盟を強調するものだ。韓国軍に対する平時の統制権は金泳三政権時の94年に韓国軍にすでに返還されている。今回の移譲延期は07年2月に盧武鉉政権が米国と合意した戦時の作戦統制権の在韓米軍から韓国軍への移譲に関するものだ。
 韓半島において想定される有事の態様からみて、在韓米軍司令官から韓国軍への戦時作戦統制権の延期措置を歓迎する。ただ、期限を設定したことについては性急すぎたのではないか。

北の体制不安への備え
 想定される有事とは、1つは哨戒艦天安への爆沈攻撃にみるNLL(海上北方限界線)に対する北韓の侵犯拡大である。2つは金正日後継強行と体制不安定化だ。3つは統制経済の行き詰まりによる体制不安だ。4つは北韓の非核化・大量破壊兵器破棄問題での緊張事態である。
 いずれも地域全体の安全と深く関わる懸案であり、これに備える韓米の緊密な同盟関係が求められる。現在、国連安保理で制裁に向けた協議が行われている北軍部の天安爆沈攻撃すなわち休戦協定違反は57年間にわたって行われてきた休戦協定の枠組み破壊の試みであるとともに、半島統一に向けた北の武力路線の発露であり、不穏な意図を隠した攻撃とみなければならない。
 戦時作戦統制権の移譲延期合意に対して北韓は、「危険千万な現在の事態をいっそう極端な状況に追いやり、われわれとの全面戦争も辞さない極めて重大な挑発」(祖国平和統一委員会)だと危機感を煽っている。だが、韓半島平和に対して挑発的態度を取っているのは、民主主義社会であることの必須の関門である開放体制への移行を拒否して、核開発を秘密裏に進めている北当局である。
 したがって、戦時作戦統制権の韓半島有事に対する抑止機能を踏まえ、この戦時作戦統制権を韓半島が休戦体制から平和体制に転換するまで中長期的視野において捉えなおし、存続させることを望む。
 米国と欧州の27カ国で構成するNATO(北大西洋条約機構)は加盟国が攻撃を受けた場合、集団的安全保障枠組みによって他の加盟国が軍事力を提供して地域的安全を守ることとされており、作戦権は米軍のNATO司令官が行使する仕組みになっている。これは、東の大国ロシアに対するヨーロッパの賢い選択にほかならない。韓半島の平和・安定に対する北側からの脅威に備えて戦時作戦統制権に対する実際的選択は必要だ。

韓半島情勢の国際性
 盧武鉉政権が米国と移譲に合意した07年2月は北が2度目の核実験を秘密裏に進めていた時期だ。その年の10月には海州軍港を利用可能にさせ、西海に「平和地帯」を設置することを盛り込んだ10・4南北宣言が盧武鉉と金正日の間で結ばれた。これを機会に北のNLL侵犯は増したが、こうした情勢があるのに戦時作戦権移譲が進められたのはどういった背景が盧武鉉政権にあったのだろうか。
 実際問題として、韓国軍は北韓の軍事動向に関する情報の90%を米軍に依存しているといわれている。また、少なくとも15年12月までに韓国軍は最新の情報体系に転換を図り、北韓の長距離砲撃を無力化し、開戦初期の自力対応能力を十分備える必要に迫られていると指摘されている。ブッシュ政権と移譲に合意した盧武鉉政権ですら、韓国軍が戦時作戦指揮権の移譲を受けるにあたって12年までに151兆ウォン、2020年までに621兆ウォンの国防費が必要になると見積もった。これは来年度の国防費要求額31兆6000億ウォンの20倍に相当する費用だ。
 こうした条件がみたされなければ統制権移譲は体をなさないのではないか。米国外交問題評議会は「統制権移譲を急ぐ必要はなく、韓半島の安全保障をめぐる状況に応じてスケジュールの調整が必要だ」との政策報告書を出している。

中長期的に運用を
 休戦体制が完全平和体制に転換するまでは戦時指揮権体制の役割があることは明らかなことだ。2012年の指揮権移譲に反対しその延期を求める韓国民の署名が1000万人以上に上ったことは韓国民の多くが戦時指揮権体制の共同運用が不可欠であると感じていることを物語っている。
 朝鮮戦争勃発から実に60年が経過した。そして今も韓半島は南北休戦状態に置かれている。朝鮮戦争が引き起こされ、人民軍が韓国を席巻していた1950年の7月、李承晩大統領とマッカーサー国連軍総司令官との間に交わされた公翰で韓国陸海空3軍の指揮権が国連軍司令官に移譲された。2カ月後、国連軍の仁川上陸作戦が行われ、韓国は領土主権を回復した。53年7月の休戦協定締結後、韓米相互防衛条約が結ばれ、54年発効した。
 戦時作戦統制権は国防主権の問題であるが、それとともに休戦体制を安定した平和体制に移行させる間の戦略的な共同指揮権でもある。
 韓半島をめぐる国際関係から生まれた戦時作戦統制権は平和統一の端緒をつかむまで中長期的に運用を維持していくべきだ。


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