洪 熒
選挙は民主主義制度の華であり、かつ要である。社会の成熟度や健康度を診断できる機会でもある。だからこそ、選挙制度が健康に機能するように努力せねばならない。
李明博政権への中間評価と言える6月2日の地方選挙だったが、李政権への評価だけでなく、韓国社会がこれから克服せねばならない諸問題が浮き彫りになった。
今回の地方選挙は、海軍哨戒艦「天安」爆沈事件という、朝鮮戦争以来の未曾有の安保危機の中で行われた。
政府が「天安」を爆沈させた北韓製重魚雷を公開したのは、投票日の2週間前。国際社会が金正日政権の侵略行為を糾弾し、李大統領の強硬な対北措置を支持する環境の中で行われた地方選挙でもあった。
「戦争か平和か」の選択
だが、選挙結果は野党の勝利。「政変」と言えるほど常識的に起こりえない現象だった。
親北勢力は正常な選挙運動でなく、北側と連帯して戦争の不安を煽る扇動と謀略、つまり反逆的選挙運動を展開した。民主党は天安艦爆沈と金正日は無関係だと主張してきただけに、投票1週間前から、李大統領とハンナラ党の対北姿勢は戦争を招くというキャンペーンに出た。「戦争か平和か」という二者択一を迫った。
李大統領最大の弱点である理念のなさを衝く戦術だが、民主党は勝利のために敵(金正日)と露骨に連帯した。選挙には勝ったが、自ら親北勢力であることを証明した。
常識なき投票行動
今回も政治的良識に挑戦した犯罪歴のある者や悪質な兵役忌避者がたくさん出馬した。昨年自殺した盧武鉉前大統領の路線継承を誓った、「486主思派」の核心人士ら(李光宰・江原道知事、安熙正・忠南道知事、宋永吉・仁川市長など)が堂々と復活した。
彼らには、政治資金法違反や、北の核を露骨に擁護してきた前歴がある。有権者はそれを知りつつ支持した。この常識なき投票行動とそれに伴う結果は有権者の責任だ。
もっとも、北韓製魚雷CHT―02Dという物証を提示されても、天安爆沈事件が金正日の仕業であることを認めなかった人々は有権者の4分の1もいた。常識の基準がここまで異なると、一つの共同体を維持するのが難しくなる。
法治破壊勢力の温存
国家の安全を護るための基準・常識を統一させる責任は政府にある。法治こそ唯一・最高の基準であるはずだが、李大統領は、自らに課せられた憲法的・歴史的責務を果たそうとせず、法治を破壊する勢力を温存させている。
先週、韓米連合軍の戦時作戦計画5027を敵に漏洩した現役陸軍少将が摘発された。「主敵」を同伴者と強弁した親北左翼政権の国家反逆構造もまったく是正されていない。
ローマは外からの侵略で滅びたのではない。内部から崩壊したのだ。
健全な保守政党を
天安艦爆沈への制裁と自衛権に反対する内部の敵野党や親北勢力に対して、政府与党は一言の反論もしていない。「中道実用」と経済回復ばかりを言っている。
李大統領は、爆沈直後に誤った報告・分析を行って大統領と国民を騙した青瓦台安保ラインの一人も処分していない。権力の周辺が病んだ価値観を持つ者で溢れている。
親北野党はもちろん、中道与党も常識的な国民に深い挫折感を与えている。ビジョンなき国民は滅びる。韓国社会に常識を取り戻すために戦う健全な保守政党の出現なしに、北韓解放も韓国の未来もない。