46人の韓国海軍将兵犠牲者を出した哨戒艦天安の爆沈は北韓の魚雷攻撃によるものだった。改めて金正日政権の好戦的行動を強く糾弾する。
韓国政府と国際合同調査団は軍艦へのテロ攻撃の犯人を突き止める物証を挙げることに成功した。事件当初から冷静な対応を取った李明博大統領は誰も否定できない証拠を収集した。
韓国の同盟国、友好国をはじめ各国政府が国際合同調査団の調査結果を受け入れた。インドをはじめとする主要非同盟諸国も対北非難声明を発表した。中国の温家宝首相は5月29日、訪韓中のソウルで「中国は正義を主張する責任ある国家として、韓国側と関連国による共同調査を重視する」との考えを強調した。ロシアも国際合同調査結果を分析するため専門家の派遣を決定した。中国政府の率直な態度表明を大いに歓迎したい。
物証示されても「韓米の謀略」
明白な証拠が挙げられたにもかかわらず天安爆沈調査は「韓米の謀略」だと北韓当局は非難している。5月30日には平壌で党主導の10万人集会を開いて「一触即発の重大な情勢がつくり出されている」と緊張を煽った。北当局はヨーロッパ、アフリカ、東南アジアの諸国を対象に海外公館が各国政府に自らの潔白を主張しているようだ。ところが、根拠のない釈明に接した一部の国が「事件は捏造だという証拠や北の仕業でないという証拠を提示してほしい」と要求するや証拠提示はもちろん、十分な対応ができず恥をかいたという。5月28日には国防委員会が異例にも平壌で海外のメディアや駐在外交官を集めて弁明会見を開いた。
日本では、朝鮮総連が22―23日東京で開いた第22回全体大会で許宗萬責任副議長が韓米謀略説を報告するありさまだ。さらに6・15共同宣言実践北側委員会は「韓国当局が沈没事件を捏造し、危機を回避しようとあがいている」と2日の統一地方選に介入する声明を発表している。北韓国防委員会は韓国の社会団体に向けメールを発信し、天安爆沈謀略説を流布させるよう指示まで下している。北韓の挑発的軍事行動は先軍体制の矛盾を外部に転嫁し緊張を高めようとするものだ。
自衛権発動は当然
調査結果の発表を「戦争局面だ」と煽り、「安保理へ提起なら全面戦争」と脅す北当局の振る舞いから、南北関係の現状を判断するとどうなるであろうか。
北当局の天安攻撃は休戦協定違反であり、不可侵をうたった南北基本合意書違反であり、国連憲章違反である。このような北政権の秩序破壊行為は韓半島の平和と安定を危うくし、周辺国に災いを及ぼし、国民の犠牲を招く原因だ。李明博大統領は5月24日の国民向け談話で、北当局の武力侵犯には自衛権を発動すると述べた。挑発と侵犯を抑止するのは当然である。
93年、北はNPT脱退宣言を発した。国防委員長に就任した金正日の下、94年3月ソウルで開かれた南北実務代表会談で北の朴英洙団長はメモを手に「戦争が起これば(ソウルは)火の海になってしまうだろう」と発言した。この脅迫を受け、95年の韓国国防白書は「北韓=主敵」概念を初めて使用した。安全保障に対する北の脅威を明確にしたものだ。この主敵概念は盧武鉉政権時代の04年、「現存する北韓の軍事的脅威」などの用語に置き換わったり、主敵概念が喪失したりしたが、今回その「主敵」記述の復活が検討されている。相次ぐ核実験、ミサイル発射実験で大量破壊兵器の脅威を高めている北韓指導部に対して、NLL侵犯と天安爆沈事件を機に主敵概念を復活させることは当然の帰結だ。北がつくり出している韓半島危機の現状は親北政権下に行われた「6・15共同宣言」(2000年)の見直しも余儀なくさせている。ソウルオリンピックの年、1988年7月に発表された北方政策「7・7宣言」以前への逆戻りさえあり得る状況だ。
最も大事なのは原点に返り、足元を固めることだ。先軍体制の北を主敵と定め、制裁対象として無力化すること、韓国政府組織内の親北勢力に対しての適切な方向付けや機構整備も求められるだろう。在外同胞社会や在日韓国民団でも韓国国民の立場に立つ運動を組織内において進め、再整備することが求められている。