【寄稿】天安艦沈没を金正日の最後にせよ

金正日独裁の悪行に対し怒らない青瓦台
日付: 2010年04月28日 00時00分

 

26日午前、ソウル広場に設置された天安艦沈没事故の犠牲将兵合同焼香所に弔問を終えた後、海軍将兵を慰問する李明博大統領
 

 韓国海軍の哨戒艦「天安」がNLL(北方限界線)を哨戒中、領海内で魚雷攻撃を受けて轟沈された。47人が戦死・失踪し、捜索に当たった民間人からも9人の犠牲者がでた。金正日独裁体制を相手に、カネで買う平和がいかに虚しいものかを改めて確認させる事件だ。

 平壌は昨年1月、「人民軍総参謀部」代弁人と「祖平統(労働党統一戦線部)」名義の声明で南北当局間のすべての政治・軍事合意の破棄を宣言し、今回の攻撃を予告していた。天安艦沈没は、金正日が停戦協定の破棄を行動で示したものなのだ。ただ、軍艦への攻撃は宣戦布告の事由に当たるため、韓米を相手にした全面戦争を恐れた金正日は、魚雷攻撃で「完全犯罪」を謀ったのだ。
 当然、韓国は自衛権・報復(反撃)権を行使する権利を持つ。だが、事件直後から李明博大統領と彼の安保スタッフは、加害者への徹底的な膺懲ようちょうでなく、自らの狼狽・無能ぶりを内外に曝け出す行動をとった。青瓦台(大統領府)は、軍の的確な判断と正当な対応の打診を無視し、状況を歪曲して国民を騙そうとした。

 常識的な韓国人なら誰もが北の仕業と分かったのに、青瓦台は、北の攻撃と報告した軍に「予断するな」と叱責し「北韓側介入の証拠はない」と発表した。メディアには「軍が言うことを信じるな(報道するな)」と注文した。韓国の「親北左派」は一斉に北の介入の可能性を否定し、逆に韓国軍を責める異常事態になった。

 北の攻撃であることが明らかになり、金泰栄国防長官が「国家安保次元の重大事態」であると言明したのに、李大統領は今も加害者である金正日体制への憤怒と報復より、被害者の軍ばかりを咎めている。国家と国民の安全より、自分たちの面子ばかりを気にしているように見える。

 安保軽視は李政権の特徴と言えるが、青瓦台が天安艦沈没事件で見せた“常識力"の欠如と狼狽ぶりはどこからきたのか。
 青瓦台のこの不思議な行動は、李大統領が自ら認めたとおり、青瓦台が南北首脳会談を推進していたためだ。青瓦台は今年に入って会談開催のための根回しを活発化してきた。大統領の側近は、あらゆる機会を通じて今年中に第3次南北首脳会談があることを既定事実化してきた。金正日との会談を実現させたいという願いが、判断と対応を狂わせた。

 

 今の青瓦台陣容を見ると、安保首席秘書官(金星煥)、統一秘書官(鄭文憲)、国民統合特別補佐官(金徳龍)など、ほとんどが邪悪な金正日独裁との共存を主張してきた人物だ。金徳龍特補は、金正日独裁体制との和解を主導する「民族和解協力汎国民協議会」(民和協)の代表常任議長であり、彼の平壌側のパートナーは労働党統一戦線部の交流1課である。
 李大統領をはじめ、彼らには際立つ共通点がある。金正日独裁の悪行に対して怒らないことだ。彼ら自身が悪であるか、悪に無知なのだ。

 悪と独裁は力で抑えるか除去するしかない。恐れれば支配される。南北の対峙下にあって、「中道実用路線」は幻想だ。金正日と戦うのを恐れて共存するのは不可能だ。共存が可能になるのは、こちらが相手を抑えるか、相手の要求に応じたときだ。従北勢力や中道論者らは、金正日との妥協を平和だというが、妥協による平和は金正日への屈服であり、悪と独裁の肩を持つことになる。

 李大統領の対北路線は、金正日との共存を目指す点で、根本的に金大中や盧武鉉と差がない。それは中道・実用の価値観の必然的な帰結で、盧武鉉と金大中を国民葬や国葬で送ったのはその証左だ。李大統領は前政権の対北路線を継承したが、天安艦事態が発生するまで、実行を延ばしてきただけだったと言えよう。

 金正日の挑発に怖気づくような青瓦台を見る国民は惨憺たる気持ちだ。さらに、沈没の原因究明を、民軍合同調査団だけでなく、また韓米同盟だけでなく、英国、オーストラリア、スウェーデンを参加させた方式にした李政権の主体性の欠如に国民はもう一度絶望する。中国まで参加させろと言う人物もいるが、自国の軍事機密を世界中にばらすような行為を、地球上のどの国がやるのか。
 いつからか韓国社会は自らの生存を否定する敵の攻撃に対して怒らず、反撃しなくなった。韓国政府は自国民が拉致されても、黄長燁を暗殺する刺客を送られても、厳重抗議すらしていない。仮に、その刺客がアメリカや日本からだったらどうだっただろうか。

 韓国は建国以来、共産主義・独裁勢力と戦ってきた。今年は金日成による「南侵戦争」から60年。戦争は見えない形で熾烈に続いている。大統領の暗殺を狙ったテロをはじめ平壌からの数えきれない攻撃で、韓国人はおびただしい血を流した。和解や合意や共存は、それを尊重し、守る相手にだけ意味がある。

 65年前の韓半島の解放はわれわれの自力でなく他力によるものだった。韓国はその後もわれわれを抹殺しようとする独裁と戦っている。今まで流した血だけで十分だ。われわれの安全と繁栄を護るため、100年間も植民地以下の境遇にある北韓同胞を解放するため、天安艦の悲劇を最後に、金正日体制を打倒すべきである。

(ホン・ヒョン)

洪 熒 (本紙論説委員)

 

 

 


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