金正日総書記の訪中をめぐる情報が交錯している。「訪中は秒読み」とする韓国のメディアに対し、日本のメディアは「しばらくはない」と相反する見方を示しているが、金総書記の訪中と北朝鮮の6カ国協議復帰が迫っているとみる予測は、韓日メディアに共通している。
北朝鮮が6カ国協議から離脱したのは昨年4月のこと。国連安保理が長距離弾道ミサイル発射を非難する議長声明を採択したのを受けてのことだった。当時、北朝鮮の外務省報道官が朝鮮中央通信を通じ、「6カ国協議は必要ない」という声明まで発表したことを思えば、大きなムードの変化だ。
北朝鮮はかつて核放棄に同意してさまざまな見返りを手に入れたように、今回も「大がかりな取引」をしようとしている。とはいえ、米国は北朝鮮の復帰に見返りを与えない立場を明らかにしている。
両者の立場がかけ離れたまま平行線をたどっている状態であるにもかかわらず、復帰説がささやかれている背景には、中国の存在がある。
北朝鮮経済は、国連安保理制裁決議や、デノミネーション(通貨呼称単位の変更)政策の失敗により窮地に立たされている。経済の立て直しが急がれるが、国際社会に頭を下げてまで支援を引き出したくない北朝鮮に中国が大規模支援意向を示しているのだ。
すでに吉林省人民政府が約40億円を投じ、中朝国境の咸鏡北道恩徳郡元汀里から羅先特別市の羅津港に通じる道路の改修に乗り出している。
6カ国協議の議長国として経済支援をテコに同協議への北朝鮮復帰にめどをつけたい中国と、経済再建とともに国際社会との関係改善の道筋をつけたい北朝鮮の狙いが一致したと言える。
だが、物事が順調に進み、6カ国協議が再開されたとしても、問題は山積している。
6カ国協議関連国は、北朝鮮の核問題をめぐり、建前では非核化を原則としているが、各国の対応姿勢はバラバラだ。
中国は非核化より北朝鮮の安定を図っているとの印象を否めない。今回の経済支援も、インフラを整備し、北朝鮮の豊富な地下資源に対する影響力を確保したい思惑が垣間見える。
米国は後戻りできない「完全な核放棄」という目標は明確だが、具体案を提示できず、6カ国協議への復帰だけを求めている。日本も拉致問題の解決を優先するあまり、核問題に関してはこれといった解決案を示さずにいる。
北朝鮮が国際社会に対し、これまで見せた柔軟な姿勢は中国に配慮したものと言っていい。
米中関係がこじれ、関連国の足並みが乱れれば、6カ国協議では終わりのない駆け引きが永遠と続くことになりかねない。