趙甲済
北韓で「大饑饉」で数多くの住民が死んでいた1996年、韓国とアメリカ政府は、「金正日政権の崩壊が差し迫った」と判断した。この時韓米連合司令部の国際関係担当官の仕事をしていたロバート・コリンズ氏が「北韓崩壊7段階のシナリオ」を作成した。北韓政権が崩壊へと走る「7段階シナリオ」は、「資源の枯渇-(資源投入の)優先順位化-局地的独自路線-弾圧-抵抗-分裂-政権交替」の順だった。
食糧など資源が足りなくなると、配給権を握った政権は資源を優先順位により配分する。軍隊と平壌市民など体制維持に必要な勢力にだけ供給する。この供給から除外された勢力は、市場での取引など独自的生存路線を選択する(局地的独自路線)。金正日政権はこの経済的独自路線が政治的独自性につながると判断し、首領支配体制への重大な挑戦だと看做して弾圧を始める。
この「4段階(弾圧)」は、崩壊過程の決定的局面だ。市場勢力に対する無慈悲な弾圧に成功すれば政権は暫らく維持されるが、失敗すれば住民たちの組織的な抵抗が起きて「5段階(抵抗)」に入る。彼は当時北韓が「2~4段階」の崩壊過程を通過していると見た。
13年が経った今、北韓はどこに来ているだろうか? 1998年以後10年間、南韓で親北左派政権が登場し、100億ドル分の金品を金正日政権に提供した。北韓は核兵器の開発に成功し、中国から一定の支援も受けている。北韓の変化は「4段階」の弾圧過程で10年以上遅滞した。
それから、2008年李明博政府が登場し、対北無条件支援を中断してから北では弾圧が強化され、これに対する住民たちの抵抗機微(兆し)が見られる。コリンズの「7段階」の目盛りを当てて見ると、北韓は「4段階」から「5段階」に移っているようだ。昨年末に実施された「貨幣交換」措置と市場抑圧措置およびその副作用、政権に対する住民の不満増大がこういう変化を促進させている。
「5段階」の兆しに対してコリンズ氏はこのようなリストを作った。
1.(市場勢力などが)当局の指示に従うことを拒否する。
2.政権の下部機関が財産を横領する。
3.政権維持の機関員らに威嚇と暴力が加えられる。
4.弾圧に動員された軍部隊に対して住民たちが反発する。
5.武装抵抗が起きる。
6.一部の鎮圧部隊の指揮官らは発砲を拒否する。
7.一部の軍部隊はロシアや中国へ脱出する。
「4段階」の弾圧が失敗すれば「5段階」の抵抗が起き、そうなると支配層が分裂する。「6段階」である政権の分裂過程が始まるのだ。
1.国家安全保衛部など保安機関が中央の命令に従わない。
2.政権の核心部で抗命事態が発生する。
3.師団長級など軍指揮官たちが上部の鎮圧命令に従わない。
4.支配層の暗闘で核心人物たちに対する公開処刑が始まる。
5.中央に反対する指揮官たちが連合して対抗する。
6.保安機関の幹部らがあちこちで処刑されるか無力化される。
ルーマニアの革命で見られるように「6段階」は一旦始まれば非常に速く進行するだろう。その次の「7段階」は北韓政権の交替だ。
1.金正日が他意でも自意(自分の意志)でも権力から除去される。国外脱出、暗殺、クーデター、逮捕など等の形で。自ら退くことはないだろう。
2.軍部が政権を掌握し、保安機関を統制する。
3.金正日に忠誠を尽くした「革命遺子女学校」出身の将校らは去勢される。
4.新しい政権は即刻の統一よりは経済改革により重点を置くだろう。
5.彼らは国際的な努力を通じて、北韓の主権が保障されるよう図るだろう。
コリンズ氏は、金正日政権の崩壊が南北統一へと直進する道ではなく、中国式改革開放を経由する迂廻路を辿ると予測した。これは金正日を除去しようとする勢力のほぼ一致した考えだろう。黄長燁先生は「北韓の中国式改革開放を韓国が支援しながら、徐々に北韓を吸収して行けるから、これが統一の道だ」と話す。
北韓の新しい政権が中国式改革開放に成功できるかどうかは別個の問題だ。ゴルバチョフ式に失敗すれば韓国による吸収統一が速まるはずだ。改革・開放が成功することは、統一に有利な北韓体制の自由化と、不利な政権の強化を同時に齎す。
コリンズ氏の「7段階崩壊シナリオ」から抜けているのは、大韓民国政府と国民の意志だ。韓国が持つ経済力、人権意識、情報の力が、崩壊の過程を促進させる方向へ投入されるか、金大中-盧武鉉のように遅らせる方向へ動くのかが未知の変数として残っている。