「ポスト金正日」の韓半島平和と日本の沖縄米軍基地再編問題の解決は韓半島と日本の安全保障の根幹に関わる問題といっていい。韓国では2012年、在韓米軍司令部が持つ戦時作戦統制権の韓国返還と韓米連合司令部の解体が予定されているが、沖縄の基地再編問題は韓米同盟に影響を与えるだろう。
金正日のアブセンス
韓米日間の安全保障体制の焦点の一つが、韓国統一研究院が作成したと報じられた、ポスト金正日の北朝鮮非常時における韓国の行政対応計画「復興」だ。北指導部の交代にともなうクーデター、社会的不安や暴動、難民の発生といった事態を想定し、韓国側の対策を省庁ごとにまとめたマニュアルとされている。北朝鮮が「強盛大国への門を開く」と宣言している2012年以降、金正日は存在しない可能性が高いという想定が北当局にショックを与えたのか、北は激しく反発している。
「復興」が警告する中国の介入
「復興」計画の衝撃はさらに、「北韓情勢の急変が周辺国の韓半島介入を招く可能性がある」と、中国の介入を想定していることだ。中国介入により、人民解放軍の駐留、親中政権の樹立という展開もありうる。中国は無論、北有事の独自マニュアルを持っている。北の後継体制についても北権力の一部との間に秘密裏に協議がなされている可能性がある。しかし、韓半島の問題に中国の介入を許すことは容認できない事態である。
2012年には空母を実戦配備させるという中国のプレゼンスは軍事的にも増大しつづける。中国が空母を配備すれば太平洋での米国の戦略体制は変わる。沖縄政策も変わり、米軍の極東配置も変わるだろう。
米国防省は1月30日、総額64億ドルに上る台湾への武器売却計画を議会に通告した。中国は中台関係への干渉だとして米国との軍事交流を中断し、台湾への武器売却に関与する米企業への制裁措置を発動する方針を示した。しかしオバマ政権は今月2日、サイバー・宇宙空間などで中国による脅威が増していることに懸念を示し、同盟国との連携を重視する初の安保戦略を発表した。
米中の戦略関係の変化に周辺国は備えを持たなければならない。韓国はすでに中国とは戦略的パートナーシップ関係を結んでいるが、中朝関係においての中国のウエイトを見る時、韓国と日本と米国にはより緊密な安全保障上の連携が求められるだろう。
韓半島情勢に不安要素が予測される状況下で沖縄米軍基地を日本国外に移転させることは、日米安保を空洞化させ、韓米日の安保協力体制に変調をもたらすことになる。沖縄米軍基地移転は早期決着が望まれるが、国外移転論には慎重な対応を求めたい。
北は変革の前夜
北の真の戦略は「社会主義体制の優越性と革命の正統性」を拠りどころとする「王国建設」、自ら主導する統一にある。開放による社会発展を拒み、「先軍体制」に行き着いてしまったが、これは改革に気づく前の中ソと同じだ。さまざまな兆候からみて、北朝鮮は社会変革に直面している。「ポスト金正日」の状況において労働党が権力を握り、かつ中国のように改革開放を進めることは難しいのだろう。
有事への備えには北核の安全管理が不可欠だ。国際社会が進めている核の無能力化には引き続き韓日米の緊密な協力が必要だ。中国の協力も要る。
韓半島の安全に関わるこれらの課題を韓国は同盟国、周辺国と協力して解決しなければならない。「復興」計画の認識を踏まえ、いま韓国は、2年後に迫った韓米連合司令部の解体と戦時作戦統制権の返還時期を再検討すべき時だ。また、自由や民主主義の普遍的価値を共有し続けようとする韓国と日本の間に、安全保障上共有すべき東アジア戦略が構築されることを望みたい。