趙甲済
昨年11月30日断行された北韓の「通貨改革」が失敗に終わりつつある兆しが随所で現れている。100倍に切上げしたウォンの実質的価値が貨幣改革の前に戻ったという。物価も100倍に値上がりしたためだ。
「貨幣改革」の過程で、北韓政権は一定額だけの交換を許したため、相当数の「新興金持ちたち」が旧札で持っていたお金を政権に強奪された。被害者の中には政権を支える権力機関の幹部たちも多いという。この幹部たちは権力を利用して蓄財しておいたが被害を被ったのだ。彼らの反感は体制危機へつながるだろう。
地方行政機関の中央に対する反発も侮れない。
物を持った人々は、物価が上がるのを待って市場に物を出さずにいる。1995年配給が中断されてから、衣食住問題を市場で解決してきた約70%の北韓住民に、北韓政権がどれくらい配給を持続できるのかが問題だ。北韓政権が配給体制へ復帰できる程物を多く確保した様子もない。
北韓政権が貨幣の価値を100倍に上げ、月給も100倍に上げて支給したため、以前より100倍の物資を供給してこそ物価の暴騰を防げる。その大量の物(商品)をどこから確保するのか? 中国からの無償援助があるだろうか? それとも、李明博政府がお金や物を提供するのか? 困り果てた金正日政権が、国軍捕虜と拉北者を南韓に帰す代りにいわゆる「人道的次元」の支援を受けるだろうか? 貨幣改革の失敗で、物価の暴騰と物資不足が続き、配給機能と市場機能が同時に壊れると、騒擾事態や大規模の脱北事態も起こり得る。その気配を感じた北韓当局は、韓・満境界地帯の警備を強化し、中国政府に脱北者の取り締まりを要請しているようだ。
北韓の2次核実験後、国連決議の対北経済制裁が作動中なのに、韓国政府だけが対北支援に乗り出すには限界があるしかない。かと言って、北韓政権が核兵器を放棄するという約束でなく実践を通じて、李明博-金正日会談を実現させる可能性も低い。南北首脳会談で、北韓側が出せるものが大したものでないと、韓国が与えられるものも大きなものはない。
金正日政権が核兵器の放棄という重大決心をしないと、通貨改革で齎された危機から脱出できないだろう。問題は、金正日の核兵器放棄は、支配層の自信感を崩壊させて体制瓦解へ進む可能性が高いという点だ。金正日は原爆を抱えたまま死ぬか、核武器を放棄して死ぬかのジレンマに置かれている。「金正日は貨幣改革で自殺した」という当初の分析が一ヶ月経って的中している。
こういう状況で李明博大統領が無理に金正日と会うと次のような事態が予想される。
1.地に落ちている金正日の権威を回復させるだろう。これは独裁政権の強化と人民に対する弾圧の加重を意味する。特に、李大統領が北韓地域へ出向いて金正日に会えば、金正日の終末を願う北韓住民たちを裏切る行為になるはずだ。
2.統一の機会をのがす。大韓民国憲法が規定した統一は、「平和的に朝鮮労働党政権を解体する自由統一」だ。つまり、金正日政権を解体して, 北韓同胞を解放することが大統領の憲法上の義務だ。大韓民国大統領は、北韓政権が自滅の道を歩くようにせねばならない。自由統一のチャンスを迎えた決定的な時期に、民族反逆者を支援するのは7000万民族の利益を1人の独裁者のため犠牲にさせることだ。改革開放の敵、統一の障害物、民族の仇である金正日を弱化させることが北韓同胞を助ける道だ。
3.李大統領が屈辱的に金正日に会えば、弱化しつつある南韓の「従北勢力」がまた大手を振るようになるだろう。
4.李大統領が屈辱的に金正日に会えば、支持基盤の正統保守勢力が彼を「背信者」と攻撃するだろう。
5.大統領が屈辱的な会談をすれば、任期が2年しか残っていない状態でこの失敗を挽回できない。嘘の約束でも守ることで、会談が成功したかのように見せようとするはずで、金正日と従北勢力の捕虜になるだろう。
6.北韓の2度目の核実験以後出来上がった対北包囲網に穴ができ、韓米同盟が弱まるだろう。
7.700万の死に責任がある民族反逆者に会って、自らの人気を上げようとした人の中で、天寿を全うし、正気を保って生きた人は少ない。悪魔と取引しようとするその心に呪いがかかるのだ。
李明博大統領が、「独裁者と会うのが何の光栄なのか。金正日に会談が欲しければこちらに来いと伝え!」という姿勢で踏ん張れば、自由統一のチャンスを掴めるはずだ。そうでなく、李大統領が屈辱的な会談を受容れると、統一のチャンスも逃し、大統領としても、人間としても、Uターン出来ない失敗の道を走ることになる。彼は岐路に立っている。7000万民族の方に立つか、1人の独裁者の方に立つのか?