1910年から2010年へ、100年の時を隔てて私たちは東アジアに住む。さまざまな出来事、時代意識と人々の苦闘、国家の存立と民族の生存がかかった100年だった。在日韓国・朝鮮人もこの時代に形成され、時代の風浪に揉まれながらもたくましく生きてきた。日本が韓国を併合した1910年から100年という節目にあたる2010年を世界に対する韓日の新しいスタートラインとして迎えたい。
韓国の立ち位置
世界に対する韓国の立ち位置は、1970年代からの経済発展とともに変貌をとげた。88年には第二次大戦後独立した後発国家のなかでは最初のオリンピックを開催し、昨年11月には韓国がOECD(経済協力開発機構)の開発援助委員会(DAC)の加盟国となり、開発途上国を支援する側に回った。今年はG20サミットが11月、韓国が議長国を務め開催される。韓国は先進諸国と新興開発途上国の利害を取りまとめる大役を担う。
19世紀後半、工業化後進地域に対する列強の進出競争が激しくなり、「富国強兵」に象徴される資本帝国主義の時代、世界支配は広がり、諸国・民族の抵抗が拡大した。新興経済圏の地域・諸国の多くが先進列強の支配に対して独立・解放のため闘った。150年前、アジア諸国・諸民族にとって西洋文明の衝撃に対する「開国」が生存のためのテーマであったが、150年後の現在は「グローバル化」がテーマだ。世界の発展は有機的な連関性のなかにある。
アジアの台頭
新しい潮流の変化は、ベルリンの壁崩壊で冷戦が終結したことから起きた。ソ連が崩壊し、東欧が自主路線を宣言した。また東西ドイツが統一され、旧社会主義圏は市場主義に移行した。ロシア、中国を含む新興BRICS諸国の経済は目覚ましい発展を遂げた。
アジアの台頭は、中国に限った話ではない。インドも国の存在感を世界にはっきり感じさせるようになった。中国の生産大国から経済大国、金融大国への発展は否応なしに米国とともに中国の影響力を高め、G2の時代を開いている。
世界の主要国であるG8諸国は、高齢化と少子化により経済成長が低迷し、成長のエンジンは新興国を含めたG20に移った。世界のあらゆる問題はG8だけでは解決できない。新興国の経済成長は何億もの人々を貧困から救い出したが、通信技術の急速な進歩は、経済だけでなく政治をも辺境の地まで伝える。ズビグネフ・ブレジンスキーは、この現象を「グローバルな政治的目覚め」と呼んでいるが、衛星テレビやウェブはいつの日か、世界的な民主主義に向かうスタートを刻んだと見なされるだろう。北韓や中国もこの例外ではない。「グローバル化」は経済だけでなく文化的社会的な変化を伴う。それらの変化を取り入れた地域だけが発展し続けていくだろう。
新しい時代の課題
グローバル時代には、「民族・国家」の多様性と同時に「個」の優先が求められる。しかし分断国家としての韓国は、統一への事前準備に万全を期さねばならない。
見捨てられた北住民を解放すべき努力と毅然さが求められる。それには、国内にはびこる「韓国病」とも言える過度な自己主張や利己主義、力の論理だけを可視させる政治風土から対話と妥協を見出す政治風土への転換が必要だろう。それは韓国に強い「正邪論的二元論」からの脱却になる。グローバル時代は競争と断絶の時代から共存と対話の時代である。対話と妥協が文化の基準だ。在日社会も海外同胞として一定の役割が期待されている。「民団創団」精神を鑑み、団結した姿で、本国や居住する日本、総連や北との関係を毅然として確立すべきだろう。新しい時代は毅然とした「個」「国家および社会」を望む一方で他者への包容性を求めている。