北韓が電撃的に実施した「11・30貨幣交換措置」(デノミ)から1カ月7年前の経済管理改善措置と同様、いまだに北韓の公式メディアは沈黙を守ったままだが、慢性的な供給不足で物価管理さえ困難で、目的の「市場価格統制」「私市場縮小」は絶望的だ。
憲法の修正内容さえ公式メディアで報じない北韓は、今回のデノミ実施についても在日朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」を通して対外的に公表した。
7年前の「改善措置」実施の時にも、朝鮮新報のみに具体的な物価・賃金変更内容を公表させている。その後も北韓の公式メディアは具体的な内容を一切報じていない。
「貨幣交換事業」実施中の12月4日に朝鮮新報平壌駐在記者のインタビューに応じた中央銀行の実務責任者(責任部員)は、デノミ後の「市場での物価の平均水準」を前回措置の「2002年7月直後より低くなるものと予測している」と発言している。
7年前、たとえばコメ1キログラムの「国定価格」は500倍引き上げられ44北ウォンになった。しかし90年代半ば以降の大飢饉で配給制度は崩壊し、03年には統制経済の「補助的な空間」として公認したチャンマダン(青空市場=当初のヤミ市)の価格が実勢を反映する「市場価格」として浸透した。直近のコメ価格はキロ1700~3000北ウォンと伝えられていた。
今回のデノミ実施後の北内部状況は、韓国の脱北者団体やそのウェブサイトを通じて情報が流出している。すでに韓国入りした脱北者は1万8500人近くまで達し、その人的なつながりから、携帯電話などを通じての情報は比較的精度が高いと考えられる。7年前との状況の大きな違いだ。
それらの情報によると北韓はデノミ後のコメの価格を1キログラム22、23北新ウォンと公示したが、実施直後から実勢価格は約50北新ウォンに暴騰した。
また他の食料品も市場の実勢価格は公示価格の3~4倍となっている。早くも中央銀行担当者が朝鮮新報で公言したデノミに伴う価格管理に失敗したのは明らかだ。
物資の構造的な供給不足という北韓の経済体制に手つかずで「非正常的な通貨膨張現象(インフレのこと)を根絶できる物質的土台が仕上がった」(朝鮮新報)という見方は早くも破綻した。