趙甲済
北韓政権の核心勢力である労働党、政務院、軍の幹部らが最も恐れるのは免職か粛清だ。特権に伴う特恵が一夜で消える。住んでいた家も、家具を置いたまま出なければならない。「烽火診療所」や外貨商店へも行けなくなる。病気でも薬もない洞診療所に行って冷遇される。憧れの対象から軽蔑の対象に変わる。これによる心理的な萎縮は大きい。北韓では身分上の転落は全てのものを失うことを意味する。
幹部たちは不安な未来に備えてお金を貯めようとする。お金だけが身分が堕ちる衝撃を緩和できると考える。彼らには賄賂が効く。部下が海外出張に出て帰国の時、1000ドル程度を納めるといえば如何なる名分を動員してでも出張命令書を作ってくれるという。国家保衛部の幹部たちもこういう生計型の腐敗においては例外でない。
左派政権の10年間、北韓へ渡った金品は約100億ドルに達するが、このお金の1%でも幹部層を対象にした「民主化工作」に使ったら、今頃は「朝鮮労働党」を弄べるはずだと言う脱北者たちもいる。お金さえ使えば「労働党」の中に「親韓勢力」を作れるということだ。「将軍様は信じられない。お金を信じよう」という心理構造に上手く食い込まねばならないという話だ。
今北韓政権内部の雰囲気は人々が大量餓死した大飢僅の時と似ている。黄長燁先生が韓国へ脱出した1997年は、「核心階層」も金正日政権の終末が近づいていると考え始める時だった。危機に陥った金正日を救ったのは金大中だった。2000年6月、金大中(当時大統領)が平壌に行って金正日が突付けた反憲法的「6.15宣言」にサインして対北無条件支援を始めるや、幹部層は「さすがの将軍様だ」と言い始めた。金正日の権威が蘇って政権も危機から脱出できた。
金大中の「対北屈従政策」は、金正日政権の住民統制力を回復させたことで統一のチャンスを逸するようにした。2005年頃なると金正日は部下たちに「これからはソウルを火の海に云々するな。どうせ我々のものになるソウルではないのか」と話すくらいだった。
昨年、李明博政権出帆後、対北無条件支援が中断され、金正日はまた苦境に立たされた。だが、李大統領がいわゆる「頂上会談病」に罹って、金正日に会うため対北大盤振舞いを再開したら、再び金正日の権威を高めて(統一への)二度目のチャンスを逃すことになるかもしれない。金正日が、任期が2~3年しか残っていない韓国大統領のため原爆廃棄のような約束をするはずもなく、やっても守る理由がない。
北韓の経済難と幹部層の腐敗は、対北工作が効ける好條件だが、問題は韓国政府の意志だ。