趙甲済
金正日政権が昨日(11月30日)貨幣を100対1に評価切下げする改革を電撃実施したという。この措置で、北韓当局は住民たちが商売をやって集めたお金を交換過程で把握し、一部は銀行に強制預置させることができるようになった。
この「貨幣改革」は、北韓住民に大きな動揺をもたらすはずだ。最悪の場合は騒擾事態が起きる可能性も排除できない。北韓住民は、1990年代後半の大飢饉事態の時、配給が止まるや生残るため市場を作った。この市場が成長し始めたら、いよいよ住民たちが党よりは市場にもっと頼るようになった。平壌市民と軍人、そして党の高級幹部らと暴圧機構の従事者らを除いた約70%の住民は市場を通じて衣食住を解決する。
社会主義体制では市場が拡大すれば巨大な変化が起きる。北韓では市場の拡大が、党の指導でなく党の妨害を克服して進んだという点で革命的性格を持っている。「下からの革命」が市場を媒介として、ゆっくり、だが確実に進行しているのだ。
1.「朝鮮労働党」の統制力が弱まっている。「朝鮮労働党」の住民統制は配給を与える代価でもあるのに、配給は与えず弾圧だけをするには限界がある。「市場」を引締めるべき人々も生きるために市場に出る人々を同情せざるを得ないため、過去のように苛酷に取り締まれない。
2.金正日政権に対して「やってくれることはなく圧制ばかりする」という住民たちの不満が広がっている。金正日を私的な場でののしっても申告(密告)する人がないという。
3.市場を通じて反金正日的な品物や情報がたくさん流通する。中国から入った韓国ドラマのビデオとラジオなどが市場で売れる。
4.市場が大きくなるほど北韓の国家機構は弱くなる。税金の徴収が減り、企業所に欠勤する人々が増える。中小の企業所の勤務者たちは、会社に出勤せず市場に出て金を儲けた後一定部分を企業所に納めるという。
5.「朝鮮労働党」の幹部たちも、お金だけが自分たちを保護してくれると信じる。軍隊と公職社会でわいろが横行し、こういう腐敗構造を利用して脱北者が増える。韓国の対北工作もお金さえ上手く使えば成果を上げられる条件ができた。
6.北韓では市場と金正日の権力が競い合っているが、今度の「貨幣改革」は押されている(金正日)権力が情勢を逆転させようとする足掻きだ。
こういう情勢の変化に合わせて、韓国政府と民間の愛国勢力がやるべき事が多い。北韓に対するあらゆる支援は、市場を強化して権力を弱化させる方向に、住民たちを意識化し労働党幹部たちを変化させる方向に行われねばならない。(金大中・盧武鉉)左派政権が金正日に与えた約100億ドルの金品の中で10%だけを「対北自由化工作」に投じたら、北韓政権は崩れて北核問題も解決されたかも知れない。
こういう局面で、滅びつつある金正日を李明博大統領が訪ねて会う場面を演出すれば、労働党独裁を蘇えらせ、市場を殺すことになるだろう。今北韓で起きている望ましい変化は、李明博政府が対北大盤振る舞いを中断したことと関連がある。(もし李大統領が)金正日と会ってまた大規模の対北支援を約束すれば、市場と住民は裏切られたと思い、金正日は息を吹き返すだろう。
金大中(当時大統領)は、2000年6月、5億ドルで買収した会談をするため平壌を訪問して瀕死状態の金正日を蘇生させ、韓国内の「従北勢力」を育てた前例がある。李明博大統領がそういう「頂上会談病」に罹らなくてこそ、退任後が安全だろう。