慶南大総長 朴在圭
10日、西海(黄海)上で南北間の戦闘が発生した。韓日がサッカーワールドカップで盛りあがっていた02年6月の第2次延坪海戦以来、約7年半ぶりの軍事衝突だった。
なぜ交戦が起きたのか、交戦が今後の半島情勢にどのような影響を与えるかについて関心が高まっている。
南北関係は8月から、進展があるように見えながら小康状態が続いている。
玄貞恩・現代グループ会長の訪朝と金正日総書記との面談、開城工団問題に対する南北政府間の実務者会談、北朝鮮の金大中・前大統領弔問使節団と李明博大統領との面談、南北赤十字会談と離散家族再会など、昨年に比べて前向きな関係が維持されてきた。これらは南北政府間の一定の相互理解の上に成り立っている。
特に北韓の対南接近は積極的だ。党機関紙の労働新聞や内閣機関紙の民主朝鮮を通じて、連日南北和解協力と団合、交流の大切さを強調している。
一方、オバマ政権発足後の米朝関係は、足踏み状態だ。
北韓は4月にミサイル発射を強行し、5月には2度目の核実験を断行した。米政府は国連などの国際社会を通じて対北制裁を開始した。
ところが、北韓が韓国に接近しはじめた8月から、米朝間でも水面下の接触が行われてきた。
10月、北韓の李根米朝局長と米国のソン・キム6カ国協議首席代表が会い、相互の関心事に対する直接対話を交わした。ボスワース対北韓特使の訪朝が年内に行われるという米国務省の公式発表は、こうした接触の成果に違いない。
南北および米朝関係が肯定的な変化の兆しを見せる中、北韓の警備艇はNLL(北方限界線)を越え、南北間の交戦が発生した。
一部の専門家は今回の交戦を偶発的なものと分析している。事前にNLLは無効であるというような北韓軍部の通達はなく、北韓漁船や警備艇による事前の挑発行為もなかったことが根拠になっている。NLLを越えて南下してきた北韓の警備艇が1雙だけで、ほかの警備艇が戦闘に参加しなかったという点も、事件が偶発的だったいう主張の裏づけになっている。
しかし、それでは韓国側の警告放送と警告射撃を無視して照準射撃を行ったことに対する説明は不十分だ。
韓半島は停戦状態にある。偶発であれ意図的であれ、物理的衝突の可能性は常に存在する。99年と02年には、実際に延坪沖で衝突があった。延坪海戦は北韓側の挑発であり、明確に意図されたものであることは知られている。
今回の大青交戦も、確証はないものの、北韓の意図的な攻撃だった可能性を排除できない。北韓は、半島情勢に関わる国際社会に対するメッセージを伝えようとしているようだ。
オバマ大統領訪韓を1週間後に控え、半島西海上で軍事衝突を起こすことで、南北の緊張状態を演出する効果を狙ったとも考えられる。
ボスワース特別代表の訪朝により、米朝2国間対話がほぼ既定路線となった段階での交戦であることも注目すべきだ。今後の米朝対話で北が主導権を握り、米国に「こちらはそれほど甘くない」と印象付ける効果もあるだろう。
つまり、今回の交戦は、オバマ大統領の訪韓と米朝対話を前に、韓国と米国に揺さぶりをかける心理戦であると見ていいだろう。そのため、今後、近いうちに再び南北が戦闘状態になる可能性は極めて低い。
韓国政府と米国政府は冷静な対応を見せている。北韓も韓国側に挑発の責任を転嫁しているが、南北関係改善の雰囲気を壊さないような配慮も見受けられる。
かといって、半島安保を疎かにしてはいけない。軍事的緊張は続いている。北韓の核問題を平和的に解決する努力は継続すべきだ。
米朝対話は両者が真剣に向き合い、肯定的な結果を導き出さなければならない。このような観点から、オバマ政権が米朝対話の方針を予定どおり明らかにしたことは評価できる。
韓国も北韓の挑発には毅然と対応しつつ、半島平和および南北の和解と協力を進展させる努力を怠ってはいけない。戦闘での一方的勝利に酔って、南北関係の進展より軍事的衝突に慣れていく方が懸念すべきことだ。
李明博政権は、今こそ南北関係の正常化と政府間対話再開のために努力しなければならない時であることをよく知っているだろう。