張真晟(前労働党統戦部)
西海交戦(11月10日)が偶発なのか挑発なのかを糺すのは事実上意味が無い。その理由は、画一化した北韓の構造上一度でもなく3度の交戦は絶対不可能だからだ。
筆者は、平壌にいた時、統戦部で勤めたことがあって、2006年7月号の「新東亜」に、金正日の指示で起きた2002年の西海交戦の前後のことを寄稿したことがある。北韓の「西海挑発戦略」を要約すると、大きく三つが挙げられる。
まずは、「太陽政策」逆利用戦略の一環で、陸地では対話を通じて対北支援を引き出す一方、南・北葛藤の延長線で交戦場所を海へ移したのだ。
二つ目は、金大中の「太陽政策」宣言後、ハンナラ党からの「相互主義」主張を遮断するための緩衝地域確保の目的で、韓国政界に「太陽政策」が固着するように支援するための平和脅迫戦術だ。
三つ目は、対北支援による北の住民の「親韓」情緒を薄め、西海交戦を通じて「反韓」情緒を刺激などで、「対内結束」に利用するためだ。金正日は、「西海交戦案(構想)」の報告を受けて、対話と経済協力を通じて体制利益を極大化しながらも、(南・北間の)体制葛藤を誘発し続けられる「今日の新しい戦線」かつ「新しい38度線」だと絶賛した。
7年ぶりに再現された北側の今回の第3次西海交戦の意図は、次のように解釈できる。まず、アメリカの対外政策の優先順位から外されている「北韓問題」に衝撃を与えるための関心戦略であり、オバマ大統領の訪韓の前、北韓の存在をもう一度注目を引き、米・北両者会談に弾力を与えるためだ。
同時に、李明博大統領の「グランド・バーゲン戦略」が韓・米の政策共調へと発展するのを事前に遮断するための韓・米葛藤用であり、今後南・北対話および米・北両者会談の過程で露出される北韓の対外的宥和の雰囲気を対内的な強硬措置で補完するための二重戦略だ。のみならず、韓半島の平和管理の責任を韓国政府に擦り付けて、「グランド・バーゲン戦略」が野党や「(左傾)市民団体」の攻撃対象になるようにするための「南・南(韓国内部)葛藤」用でもある。
何よりも、北韓側は、彼らが最近示した「離散家族対面」や南北頂上会談論議の再開など、いわゆる彼らの誠意にもかかわらず、「とうもろこし1万トン」に限定したわが政府の対北支援に対する公開的な憤怒の可能性が濃厚だ。つまり、北側の今回の「西海挑発」は、わが政府の対北支援に対する砲撃であるわけだ。
追加的に、国際社会が認識している北韓の崩壊可能性を払拭させ、金正日の健康な統治能力を対外的に強調するとともに、「反韓情緒」を鼓吹して住民の結束に誘導するための対内用でもある。
今度の第3次西海交戦に対して、韓国の言論はとんでもなく金・キョクシク第4軍団長を注目するという。北韓軍はある将軍が個人的に動かせる多機能体制でない。今度の西海交戦は、第1次、第2次と同様に、南北関係を総括する労働党「統戦部」の作品であり、だから、今後の「南・北関係のシナリオ」もすでに出来上がっているはずだ。
まず、北側は、オバマ大統領の訪韓時点を目標として軍事的緊張を維持するだろう。その挑発の形態は、きわめて制限された物理的な衝突か、あるいは「朝鮮人民軍」声明や「外務省」声明など、言葉で脅迫する水準で続くと思われる。
このように緊張した雰囲気を極大化する次元で、南韓に対する責任の擦り付け攻勢を一層強化すると予想される。これは単に今回の西海交戦のみに極限される戦略でなく、2012年の南韓の大統領選挙に焦点を合わせた統一戦線部の戦略だ。「太陽政策」の継承勢力を「平和勢力」に、現政権の「実用主義」を「戦争政策」に脚色していくためには、李明博執権期間の「南・北の平和管理の責任」を最大限かぶせる必要がある。
そのようにしてこそ、次の大統領選挙で対北政策をイシュー化でき、「太陽政策」の正当性をアピールさせ、その「継承勢力」に有利な政治的雰囲気を作ってあげられるのだ。したがって、北韓側は今回の交戦を契機に、わが政府の公開謝罪を前提として主張し続け、南北対話を断絶したり南・北経協と民間交流の暫定的縮小、開城工団を管理する北韓軍の強硬機能を復元させることもできる。
特に、李明博政府の「グランド・バーゲン戦略」の修正を強要すると予想されるが、現政権を「戦争勢力」と規定して「反保守大連合」を扇動するなど、攻勢的な対南心理戦で韓国内葛藤を鼓吹させることもできる。
同時に、わが政府の「とうもろこし1万トン」の対北支援提案を断ることで、南・北関係の梗塞を意図的にアピールする一方、対北支援の「量と質」に対して猛非難すると予想される。実際に、「交戦」の当日、北側の統一戦線部が運営する「わが民族同士」サイトは、わが政府の「とうもろこし1万トン」の対北支援規模を、農夫の背負子(しょいこ)に載せても足りないみみっちいものだと非難した。「西海交戦」は、対内的目的も大きいため、今回の交戦も住民に対する対内統制や管理を強化する契機としてさらに活用すると予想される。
したがって、わが政府は、今のように北側のより大きな挑発を憂慮するのではなく、もっと原則的かつ流動的な戦略が必要だ。まず、北側の「責任の擦り付け戦略」を無力化する次元で、国防部名義で遺憾の表明と再発防止を北側に公開的に要求せねばならない。これはわが海軍の対応射撃を自制した効果に匹敵する政治的な武器だ。
特に、北側の西海挑発の犯罪を国民に周知させる次元で、わが海軍を励まし、参戦将兵たちに対する政府の優待が望ましい。このように軍の原則的な対応意志を維持する一方、わが政府の南北対話の意志と「とうもろこし1万トン」支援戦略を固守するムチとニンジンの二重戦略も取らなければならない。
そして、その延長線で、西海の「平和区域」の設定や定着を主題として「南北軍事会談」を主導的に提起する方式で「対話の優先権」を主導的に確保することが重要だ。こうしてこそ、北側の「わが民族同士」攻勢やこれに便乗(内応)して、わが政府の対北政策を失敗した政策に持っていこうとする野党や親北、左翼団体らの主張を封じ込められる。
一方、オバマ大統領の訪韓を契機に、わが政府の「グランド・バーゲン」の原則や持続意志を北側に誇示することが重要だ。これは北韓の対南圧迫を無力化し、時間的余裕の無い彼らを焦るようにさせる。また、南北対話の断絶、南北経済協力の縮小、民間交流の抑制など、北側の強硬戦略に備えて、韓・米共助で北側を圧迫できる新しいシナリオも事前に準備する必要がある。