韓国から見た北核問題と金正日(下)

解決まで制裁は堅持すべき
日付: 2009年11月05日 00時00分

外交安保研究院教授 尹徳敏

 

 北韓は、韓国には南北首脳会談、米国には核問題(非核化)、中国には6カ国協議復帰、日本には拉致問題を主要軸に、ロシアを含む5カ国を分断し、相手国別に接近してきそうである。

 北韓との交渉で一番の難題は、われわれに残された時間が少ないという点だ。
 北韓は核開発をほぼフリーハンドで行ってきた。単純に6カ国協議を再開しただけでは、北韓の核武装を避けられそうにない。北核問題解決にあたって、6カ国協議の枠組みだけでは不足と思える。

 2番目の難題は、解決の方法・手段が限定されているということである。米オバマ政権は非核化の意思こそ強いが、その推進力や取りうる手段の面では疑問が残る。オバマ政権としてはアフガニスタン問題に手をとられ、北韓問題にまで全力を注ぐのは容易ではなさそうだ。

 中国の北韓問題に対する姿勢も「様子見」のように見える。すなわち非核化原則や6カ国協議という道筋は決まっているが、6カ国協議議長国としての具体的なアイデアや行動は提示されてはいない。
 ワシントンの専門家たちと意見交換すると、米国は北韓の急変事態や金正日の健康異常に関心が向いており、金正日が生きている限り、核問題解決は不可能である、との見方を持っているようだ。
 しかしこのような見方は1994年の第1次北核危機のおりにもあったことだ。北韓政権は長くはもたないから、北韓に核廃棄を求める厳格な合意を要求せずとも、究極的には解決に至る、という「期待」をした。当時の二の舞を演ずれば、北核問題の解決は望めない。

 北核問題交渉が毎回失敗を繰り返してきた原因も振り返ってみなければならない。
 もっとも大きな理由は、20年間の交渉のなかで、北韓に対する確実で信頼に足る「ムチ」がなかったことによるものと考える。
 北韓に対して、核を放棄しなければどれだけ北韓が損失を被るか、明示的に見せつけることができなかった。とくに韓米日中ロの5カ国が共通した姿勢を示せなかった。同じテーブルにつきながら、それぞれが異なった立場で臨んでいた。非核化に苦悶する国がある一方、拉致問題に苦悶する国があり……。

 北韓に対する大規模支援は、まず日本が、ついで1994年ジュネーブ合意から米国が、そして2000年代から韓国が行ってきた。これからは中国が大規模支援をするのではないかと憂慮される。
 5カ国の間で南北関係、拉致問題、非核化など志向するポイントが分かれることは、問題解決をよりいっそう困難にする。5カ国が共通の方案をもって北韓との協議に臨む必要がある。
 そのため提起されたのが李明博大統領が唱えたグランド・バーゲン(包括的で一括的な妥結)という枠組みである。李大統領は今年8月15日にも「新韓半島構想」を発表し、北韓が核を放棄すれば大規模経済支援を実施すると明らかにしている。

 もうひとつの重要なポイントが、北核問題が最終的に解決されるまで国連安保理決議1874による対北制裁は堅持されなければならない、ということである。
 北核問題は平和的に解決されなければならないが、残された時間は多くない。

 


閉じる