北朝鮮、生物・化学兵器、猛毒サリンまで開発

60年代、金日成教示で着手
日付: 2009年10月14日 00時00分

 6カ国協議以降、核に関心が集中してきたなかで、北韓の生物兵器(バイオ兵器)・化学兵器の存在が再びクローズアップした。大量破壊兵器(WMD)にも規定されている生物・化学兵器は、北韓がすでに1960年代から研究・製造に着手、軍事境界線近くの前線部隊に配備されていることが確実視されている。

 憲法修正で名実ともに軍事国家となった北韓にとっては、核ミサイルとならぶ3点セットだ。
 韓国国防部は5日、国会国防委員会に北韓の生物・化学兵器に関する資料を提出した。国防部は(1)北韓が1960年代から金日成首相(その後主席)の「教示」により生物・化学兵器の開発を続けている(2)神経剤・びらん剤・血液剤・窒息剤・催涙剤・嘔吐剤など2500~5000トンの化学剤を複数の施設に分散・保有している(3)生物剤も炭そ・腸チフス・赤痢・コレラ・ペスト・ブルセラ症・発疹チフス・天然痘・流行性出血熱・黄熱・ボツリヌス毒素など約13種類を保有、有事にはこれらの菌体を培養・生産できる能力をもつと明らかにした。

 すでに国家情報院が公表してきた情報を大きく変更するものではない。しかし国防部が米国との「拡大抑止力」の一環として、北韓の生物・化学兵器というWMDに対処する防衛態勢を具体化していることを裏付けるものと受け止められている。

 同じく5日、国家情報院と海洋警察庁が9月23日、釜山新港を出港したパナマ船籍のコンテナ運搬船から、北韓がシリアに送ろうとしていたコンテナ4個を押収、「防護服」を発見したことが明らかになった。数千個のコンテナを積載した9万トン級の同船は先月19日に中国・天津港を出港して釜山新港に入港、次は中国・大連港に向かう予定だった。

 北韓のコンテナ4個は書類上、送り主・荷受け人とも第3国の貿易会社を偽装していた。押収された防護服はロシアモデルで、北韓が製作した模造品なのか、ロシア製品を仲介または再加工したものなのか検査している。また防護服が化学兵器用なのか、核・生物兵器の開発・使用に必要な特殊用なのか確認するため製品試験を行い、現在その結果を分析している。

 柳明桓外交通商部長官は8日の定例記者会見で、この捜査が北韓のWMD関連物品の輸出入も禁じた「国連安保理決議1874を(韓国が)履行する過程のひとつだと見ればよい」と明らかにし、押収された防護服がWMD関連物品であるとの確信を示した。

 さらに北韓がサリンも製造していることが明らかになった。猛毒のサリンはナチス・ドイツが開発した神経ガス。中国軍の特殊部隊が昨年11月と今年2月、北韓に近い遼寧省丹東周辺で、北韓方向から吹く風にのった空気中のサリンを検出した。朝日新聞が9日付で、中国当局関係者の話として報じた。

 同紙によれば検出されたサリンは1立方メートルあたり0・015~0・03マイクログラム。中国軍が航空機で無毒化する薬品を散布したとの情報もあるという。空中放出の原因を実験か保管・移動中の事故と推測している。

 北韓の生物・化学兵器について韓国ではすでに1991年、当時の盧泰愚大統領が「韓半島の非核化と平和構築のための宣言」で韓国民に「北韓が化学・生物兵器を製造し、保有していることも、よく知られた事実であります」と明らかにしている。

 また米国防総省は9年前、北韓が1989年以降「水準の高い」化学兵器を大量生産する能力をもち、保有している、とする報告書を発表。生物兵器についても「開発能力は初歩的だが、1990年代初頭には医療施設・大学で軍が研究している」と明らかにしていた。

 韓国の国家情報院も7年前、次の事実を公表した。化学兵器は8カ所の生産施設・4カ所の研究施設・7カ所の貯蔵施設を保有。生産施設は咸興・興南(咸鏡南道)、清津・阿吾地(咸鏡北道)、新義州(平安北道)、安州・順天(平安南道)、晩浦(慈江道)。新義州が今回のサリン発生場所とみられる。生物兵器は定州(平安南道)など3カ所の生産施設と6カ所の研究施設を保有している。発表当時は17種類の生物・化学兵器2500~5000トン保有しており、年間4500トンの生産能力をもつと推定していた。

 7年前に脱北した女性研究者は、勤務していた304研究所が最重要施設で、そこでは約150人の研究員が核兵器開発とともに化学兵器の開発も研究していた、と証言している。


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