非核化原則守り 断固対処を―高麗大教授 洪官喜

続く北の対南二重戦略
日付: 2009年10月07日 00時00分

 

高麗大学 北韓学教授 洪官喜

 先月6日未明、北韓の「臨津江挑発」によって韓国人6名の尊い命が無残にも犠牲となった。韓国国防部のスポークスマンによれば「北韓は黄江ダム放流の直前まで平常通りの水位を保っていた」事実が確認されており、玄仁澤統一部長官も、9日の国会答弁で、「北韓が意図的に放流したと見られる」と明かした。

 その1カ月前から、韓国および米国に対し、平和的なアプローチを進めてきた北韓当局であったために今回の惨事は、北韓による「対南二重戦略」の明確な表れである。

 北韓による二重戦略はこれだけではない。臨津江惨事の二日前である先月4日、北韓は突然、国連安保理に書簡を送り「核燃料棒再処理が最終段階に入り、抽出されたプルトニウムを武器化している」と主張した。特に、騒がれているウラニウム濃縮テストが成功裏に進められ、完成段階に入った」と公言するに至った。

 米議会の一部では、北韓の大量破壊兵器開発と不変的である挑戦的な対外戦略などを挙げながら、昨年10月、米国が削除した「テロ支援国リスト」に再び載せるべきとの意見が浮上している。北韓は、大量破壊兵器のほかにも最近では、特殊部隊を6万人増やし、18万人に至るなど、従来型戦力の増大を図っている。なおかつ北の挑発に備えた防御的性格を持つ韓米連合軍による「乙支フリーダム・ガーディアン訓練」などについて、北侵戦争のための訓練であると中断を求めるなど、図々しささえも見せている。

 金大中・元大統領の弔問団が李明博大統領を訪問し、北韓に戻った直後に「北南関係を正常化することは、民族史の要請であり、時代の切迫した要求」であると強調した北韓は、「臨津江挑発」直後には「李明博逆徒を始めとする南朝鮮の民族反逆者」と言うなど、韓国政府を非難した。韓国に対する「和解の振り」の後、韓国による対北政策に対する変化の可能性が見えなくなったので、敵対的態度に戻ったのだと推測できる場面である。

 お決まりの欺瞞と脅迫や和解の振りを繰り返す北韓の二重戦略は、国際社会からの信頼を失う主な要因である。今回の「臨津江挑発」によって北韓に対し、これ以上信じ難い集団であると判断する専門家らが増えてきている。

 今年5月25日に行われた2回目の北韓による核実験以降、「北核」を差し止め韓半島の平和を達成させようと国連決議1874に基づき、韓米両国と国際社会が行った対北経済・金融制裁によって北韓が受けた衝撃は、相当なものであるようだ。

 8月中に続けられた和解の振り、そして「臨津江挑発」や核武装脅迫などはすべて、韓・米による対北制裁の共助を崩すことで、その包囲網から抜け出そうとする策略であると思われる。
 これに伴い、北韓は今現在、米国との「直接対話」にすべてをかけている。オバマ政府は政権発足後、北韓ミサイルおよび核実験などの瀬戸際戦略に対し「これ以上の譲歩や妥協はない」と対北制裁を主導してきたが、軍事的選択肢が制限されている状況の中で、直接対話を粘り強く求めている北韓の真意を探ると共に核問題の解決方案に苦心している。

 米国は、核阻止、制裁継続、関連国との協議などの原則の下で、米・北両者対話を準備している。しかし、北韓は核不放棄、米・北両者会談後の6カ国協議復帰、核保有国認定、そして米国による制裁が続く場合の3回目の核実験などの対応方針を立てている。これによって米・北対話は時間稼ぎと支離滅裂の様相を呈し、もう一つの「長い旅路」へと繋がる可能性が高くなったと言える。

 北韓の二重戦略が露骨に現れている現時点で、私たちは「韓半島非核化」原則を堅く守り、「臨津江放流」のような北韓による挑発に対し、断固として対処しなければならない。そして韓・米間の緊密な協議や共助の下で対北制裁を持続しながら、北韓による挑発を差し止められる手段を活かしていかなければならない。

 

 


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