金成昱
金正日以後の「北韓急変事態」の可能性が色々提起されている。ソ連と東ヨーロッパ共産圏の崩壊が事実上予測不可能の事件だったことを勘案すると、北韓体制の崩壊確率ははるかに高い。韓国がその気にさえなれば、自由民主主義の統一も遠いものではない。今や韓民族の歴史上三回目の統一の機会が差し迫っている。
1.ラジオ・フリーアジア(RFA)は、10月1日、「アメリカと韓国政府が、去る8月、ハワイで開いた非公開会議で北韓の急変事態の発生に備えて、韓国主導で両国が警報体制を作るなど共同対応策を準備することに合意した」という報道した。汎政府次元で韓・米両国が北韓急変事態を議論したのは今回の会議が初めてだ。
RFA(自由アジア放送)は、「後から分かった」とさりげなく報道したが、アメリカ政府がRFAに意図的に流した演出、北韓の未来に対する事実上の宣言だ。ワシントンの外交筋はRFAを通じて、「8月4日と5日、ハワイのイーストウェスト・センター(East-West Center)で開かれた非公開会議で、北韓の急変事態に共同対応するのに必要な基本原則と両国間細部的な協力分野を議論した」と明らかにした。
この会議で扱った内容は、金正日の死亡や政権交替などによって北韓に急変事態が発生した時に備えた両国の対応原則と協力分野だ。特記すべき事項は、韓・米両国は急変事態への対応に関する基本原則として、韓国が主導的な役割(main actor)を担当し、自由民主主義に基づいた統一韓国を建設するのに両国が協力することに合意したという事実だ。また、中国の肯定的協力を誘導することに合意したという内容も含まれている。
このための具体的な協力分野は次のようだ。韓米両国は情報を共有しながら、北韓の急変事態に関する警報体制を樹立し、「大量脱北事態」に対処する方案も共に準備することにし、北韓の核弾頭をはじめ大量殺傷武器(WMD)を早期に統制し、韓国に対する軍事挑発を事前に遮断するのに互いに協力することに合意したという。
以上の韓米間の合意によれば、「われわれの願いの統一」が遠くないように感じられる。
北韓は金正日の退場後無秩序状況に陥り、これは急変事態に発展する可能性が高い。絶対権力は強くみえても、権力者の死と共に空しく崩れる場合が大部分だ。自由主義、民主主義、法治主義のようなシステムを作らなかったためだ。金正日の肉体的寿命が終わると同時に統一の序幕も開くだろう。これはほぼ必然的だ。
もちろん、「北韓急変事態」がそのまま「自由統一」ではない。二つの克服すべき抵抗が存在する。反動勢力である南北韓の左翼が「最後のあがき」に出るはずだ。韓米同盟を破棄し、韓国社会を不法・暴力・無秩序に追い込み、連邦制で赤化させようとする反逆が猛威を振るうだろう。中国共産党を如何に説得し、遮断するのかも問題だ。しかし(夜明けを告げる)鶏の首を絞めても明け方は来る。「奴隷制」が結局は無くなったように、北の暴圧政権は3代目を継承できず崩れるはずだ。歴史の闇を追う守旧左翼の最後はそれで絶望的だ。
2.ウォルター・シャープ駐韓米軍司令官は、9月29日、北韓急変事態と関連して、「広範囲な対北シナリオを検討中」と明らかにした。彼は、具体的な「単語」は口にしなかったものの、事実上「北韓急変事態に備えた『作戦計画5029』が相当部分進捗した」という言質に触れた。
「作戦計画5029」は、北韓で政権交替やクーデターなどによる内戦、北での韓国人人質事態、住民の大規模脱北、自然災害、核と生化学武器などの大量殺傷武器(WMD)の流出など6種類の不安定な事態に対する類型別軍事対応計画を盛込んだものだ。
シャープ司令官は、この日、ワシントンで記者たちと会って、「北韓内での食糧や飢謹などの問題で引き起こされる大規模難民問題から、派閥間の(権力)闘争や政権交替のような形態の問題によって引き起こされる非常に不安定な状況に至るまで、広範囲なシナリオに対して検討してきた」と話した。
シャープ司令官は、今年の4月、大韓商工会議所招請演説でも「北韓の偶発状況に備えた計画を準備中」と言い、「すでにこの計画を練習して、偶発状況の時直ちに適用可能だ」と話したことがある。
軍は、「作戦計画5029はまだ完成していない」と否認しているが、色々な観測筋は「概念計画5029」が「作戦計画5029」へと相当部分進捗していると展望している。
3.8月の韓米両国の急変事態対応策協議と並んで、類似のニュースが続いている。アメリカの民間研究機関である戦略国際問題研究所(CSIS)が最近発表した、オバマ行政府の「2010年国防政策検討報告書」は、アメリカ政府が直面しているか、これから近づく脅威に備えねばならない案件の一つとして北韓体制の崩壊を指目した。
4.9月30日、李基沢民主平和統一諮問会議の首席副議長が、北韓の急な崩壊に備えて韓国主導で対応計画を樹立しなければならないと主張した。北韓崩壊の可能性が在野だけでなく、在朝からも出たことは異例的だ。
李首席副議長は、この日の午前、ソウル龍山の戦争記念館で開かれた在郷軍人会主催の第15次栗谷フォーラムでの講演を通じて、「韓半島の急変事態が徐々に近づいている」としながら、このように言った。発言の要旨は次の通り。
「韓米連合司令部が北韓の崩壊に備えて「作戦計画5029」という対応プログラムを持っている...こういう計画も韓国が主導して作って、韓・米間で合意して中国・日本・ロシアとも合意する手順を踏まなければならない」
「韓半島の急変事態は、金正日の自然寿命と密接に関連している...われわれの対北政策はこれに備えるべきで、特にどういう体制で韓半島を統一するのかに対する明確な準備がなければならない」
「韓半島の望ましい未来像をあらかじめ作っておいて、その目標に向かっていくロードマップを樹立しておかねばならない...政府次元で今からでも韓半島の未来戦略を担当する機構を稼動しなければならず、この機構は10年や20年後の東北アジアや世界の様子を予想し、韓半島の地位と役割を提示せねばならない」
「脱北者たちに会って話を聞いてみると、南韓に定着して(新しい)文化が分かりそれなりに日常生活ができるほどまでかかる時間が最小限4年だという...北韓に急変事態が発生すれば先ず南韓と北韓の国境と出入国を統制し、北韓を南韓の経済圏に編入して近代化しなければならない」
5.北韓は崩壊する。残っているのは時期と方法だけだ。自爆の同伴者になってしまった金正日政権と親北左翼に対しても断固としなければならない。今のように卑屈に逃げるばかりしたら、北韓政権が何百回崩壊しても自由統一は来ない。差し迫った金正日の滅亡に備え、荒れ果てた北韓を再建するため力量を集めねばならない時点だ。