歴代大統領との交流、そして韓国の民主主義とは(1)

「韓国の知性」 金東吉・延世大名誉教授に聞く
日付: 2009年08月26日 00時00分

 「韓国の知性」と言われ、自他共に認める韓国保守系の知識人、金東吉・延世大名誉教授(81)。ソウル・西大門にある自宅に金名誉教授を訪ね、韓日協力のあり方(本紙8月15日付掲載)につづき、韓国社会はどうあるべきかについてインタビューした。なおインタビューは金大中・元大統領死去の前に行われた。(ソウル=李民晧)

西大門の自宅にて

―金教授が運営するホームページ「フリーダムウォッチ」が450回を超えました。ところでなぜ「李明博大統領へ」というテーマで執筆しているのですか。
  「現実的に、私が大統領になることはもうない。80歳を超す者として、最後ぐらいは大統領と語りあいたいと考えているからだ。特に、李明博大統領は我々の希望であった『政権交代』を果たした人物ではないか」

―金大中・盧武鉉前大統領を「反米親北」と断定していますが。
  「2人は反米親北派だ。金大中氏は大統領在任中、巧みに本性を隠した。盧武鉉氏は露骨に反米親北の道へと進んだ。南北分断、体制対立という現実を前提にすると、彼の答えは明らかだ。盧政権は北朝鮮を擁護する立場に立った。大韓民国の憲法では利敵行為を容認していない。憲法第1条には、自由民主主義と主権在民が明示されている。『憲法の基本を放棄し、赤化統一も良いのではないか』などという主張を容認してはならないのだ」

―前政権の利敵性はどのようなところに見受けられますか。

 「以前、東海岸の警備所では毎朝砂浜を平らに掃いていた。明け方に足跡があると、スパイまたは敵が来ていたということが把握できた。一人でも上陸したと判断すると、(韓国)軍が大々的に追撃した。しかし、盧武鉉はこうした警備体制を廃止した。反政府勢力が民主化運動家として化け、祖国の共産化を画策した。北朝鮮ではこの当時、武力を行使せずとも南を統一できるだろうと信じられていた。大韓民国では、民族精神だ、主体性だ、と謳いながら、北朝鮮に同情し、擁護するという認識が漠然と生まれたのだ」

―大統領に向けたコラムを一日も欠かさず掲載していますが、青瓦台(大統領府)からの反応はないのでしょうか。

 「あるわけないでしょう。金素月の詩を引用して、コラムに『呼んでも返事のない名前よ』と書いた。反応がないのには理由があるのだろう。青瓦台は、曖昧な『左翼・右翼』『保守・進歩』などという人為的なものさしで人々をはかっているのだ」

―左右の概念がなぜ曖昧なのでしょうか。

 「韓国では左右の概念で人を分類できない、という意味だ。日本から帰国した盧武鉉氏が『わが国にはなぜ日本のように共産党がないのか』と言った。なんとばかばかしい話だろうか。日本には休戦線(軍事境界線)もなければ共産党が南侵を狙うこともない。韓国では、自由民主主義を守ろうとする勢力と、北朝鮮を支持して赤化統一を望む反米従北勢力に分かれているだけだ」

―韓国の親北勢力はどれほど多いのでしょうか。

 「米国留学から帰国した(若手の)大学教授らは、進歩や改革を唱えながら『6・25(朝鮮戦争)で連合軍が参戦せず、マッカーサーがいなければ統一されていた』という。そういう人たちに『北へ行け』と言っても意味がない。彼らは依然として韓国に居座り、ひたすら利敵行為に明け暮れる。私は彼らに『あの時統一されていたら、留学はおろか、進歩という言葉すら発することはできなかっただろう』と言っている。何より学校が一番恐ろしい。全教組の活動を見ると、北に有益となるよう動くケースが多い。ある海兵隊の司令官の孫が学校から帰って来るなり『おじいさん、米国人は悪い人たちなのでしょう? 北朝鮮と仲良くすべきですよね』と言った。『どこでそんな話を聞いたのか』と尋ねたところ『担任の先生が教えてくれました』と答えたという。このように、韓国社会の各界各層には『金正日エージェント』が浸透している。体制が崩れることを恐れている金正日は、開放政策をとらずして南を混乱させているのだ」

―李明博政権の実体が分からない。なぜ左顧右眄したり迷ったりする人が多いのでしょう。

 「李政権に対し、これだけは言いたかった。『大韓民国は民主共和国、主権在民を守る』と宣言するように、と…。国家情報院の中に南派スパイが何人いるか推算させるべきだ。これが不可能であれば、『信念なき政権』へと成り下がるだろう」

―韓国は第2次世界大戦後、民主化に成功した。世界でも例をみないほど模範的・平和的に政権交代の伝統を築いてきた国です。三権分立の政治システムと、どの国にも引けをとらないほど整った憲法があります。にもかかわらず、なぜ韓国の民主主義は正常に機能しないのでしょうか。

 「南北韓が体制と正統性をめぐる争いをしていたら、すでに勝負は決まっていたはずだ。西ドイツが東ドイツを統一したのは、体制争いで勝利を収めたからです。南北韓も同じ方向に進みかけていたのに、金大中政権で水の泡となった。北朝鮮に同情し、擁護する勢力が増えた。李明博大統領が執権し、公営放送であるKBSの社長を交代させるのに3カ月以上も費やした。金正日エージェントが公営放送を握っていたからだ。全教組や労組、マスコミなど、韓国社会の至るところで金正日エージェントが幅をきかせている。民主主義が正常に機能しないのは、韓国内部のシステム問題もあるが、従北勢力らが絶えず韓国を煩わせていることが最も大きい」


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