李春根
ニューヨーク・タイム紙の8月9日付けは、オバマの北韓および北核問題に関する憂慮すべき認識を示す記事を載せた。新聞は、「オバマ行政府は、北核プログラムの完璧な廃棄より、核技術の拡散を防ぐことに主力する」と報道した。すでに、オバマはMSNBCとのインタビューで、「北韓がこれ以上核を開発せず、挑発してはならない」という曖昧な言及をした。「これ以上」核開発をしてはならないという言葉は、既往の核開発は容認できるという意味にもなれる重大な言及だ。
もちろん、その後各種メディアを通じて伝えられたオバマの立場は、「北韓の核武器を決して受容れられない」ということではあった。にも拘らず、アメリカが北韓の核を「完全に廃棄する」を目標にするか、あるいは、「核の拡散を封じ込める」を目標にするかの問題は、全く違う意味を持つことであり、われわれには深刻な結果をもたらす問題だ。だから、われわれはこの問題を焦眉の関心を持って見守らねばならない。
もし、アメリカが北韓の核技術拡散を封じ込めるのを目標にし、このような目標が達成される状況を北核問題が解決された状況だと看做せば、その場合、北韓は名実共にアメリカが認める核保有国になれるだろう。すでに数発保有している核爆弾を、他国に拡散しないことで問題が解決できえるなら、北韓はすでに作っておいた核武器で核保有国地位を認められると同時に、核の拡散をしないという約束を通じて、アメリカから相当な代価まで貰えるはずだ。
このような解決方案は、1994年10月21日、クリントン行政府の時、アメリカと北韓がジュネーブで行った核合意がその前例と言える。当時、アメリカは北韓の核活動を「凍結」 (Freeze)させるレベルで問題を覆う方法を取った。北側はこれ以上の核活動を中止し、アメリカと関連国はその代価として北韓に軽水炉原子力発電所を提供すると約束したのだ。
1994年の春頃、アメリカ人たちは北韓が核武器を1-2個持っているかも知れないと言い始めた。その年の夏、アメリカ人たちはまた北核の凍結という方案を持ち出した。7月8日、金日成が死亡した後、アメリカは北韓との協商を急ぎ、10月21日、北核を「凍結」する線で「核合意」を成立させた。アメリカ人たちは、ジュネーブ合意がアメリカにとってそう悪くないものだと考えた。
94年7月、金日成の死亡直前、筆者は北韓核問題に関する研究プロジェクトのためアメリカと日本を訪問し、関係者たちと面談する機会があったが、東京のアメリカ大使館で会ったロバート・カネダ氏は、アメリカが認識する北核問題の本質が何なのかを赤裸々に話してくれた。筆者は、アメリカが北韓核問題の解決方案として、「凍結」という言葉を頻繁に使っている事実を指摘し、アメリカはすでに北韓が核爆弾を1-2個持っているかも知れないと言及したことがあるが、それでは北韓が保有した核爆弾1‐2個は認められるという話なのか? と質問した。驚くことに、カネダ氏は、アメリカは北韓が保有した1-2個の核爆弾は認められると答えながら、アメリカが憂慮するのは、北韓が核を数十発作って中東の国々へ拡散させることだと躊躇なく答えた。
筆者は、アメリカは北の核1-2個は問題にならないかも知れないが、韓国の場合は致命的な危険になると話した。すると、カネダ氏は、それは韓国自身が対応すべきことだと答えた。果たして北韓がすでに核を1-2個持ってはいるのかとの筆者の質問に、彼は、「昨日雨が降ったのに、今日、昨日雨が降らなかったと話したって何の役に立つだろうか?」と反問した。
去る8月9日付のニューヨーク・タイムズは、アメリカが北韓の核が拡散されるのを封鎖さえ旨くやってもいい理由として、北韓が非常に虚弱な状態という事実を強調している。金正日と北韓は、「これ以上クリントン行政府の時のように恐怖を惹き起こすこともできず、最近の核ミサイル実験にもかかわらず、そういう威嚇は虚しくなった」と主張している。さらに、ニューヨーク ・タイム紙は、「北韓空軍機は戦争の挑発どころか、長時間滞空できる程の燃料も足りない状態」という韓国官吏たちの話も引用した。
韓国官吏がそう話したのが本当なら、真に深刻に憂慮せざるを得ない。戦略論の基本原則は、楽観的な状況を仮定しないということだ。「強盛大国」と「先軍政治」を国家モットーとし、数百万住民が餓死しても、核武器と長距離ミサイルを開発した国が北韓という現実を直視せねばならない。北韓が戦争を仕掛け、遂行できるガソリンを数ヶ月分以上備蓄しておいたとみて備えるべきだというのが戦略的思考だ。北韓に本当に石油がないなら、彼らはソウルに到達する南侵略通路周辺に無数に存在する大韓民国のガソリンスタンドを掌握する計画でも持っているはずでないか?
もちろん、現在オバマ行政府の公式目標は、依然と「完全かつ検証可能な核廃棄」だ。誰も封鎖が1次目標になったと公式に認めはしない。ヘンリー・キッシンジャー博士も、オバマが北核を封じ込めることへと政策目標を変えてはいけないと警告している。
それにも拘らず、アメリカが、北韓の核武器および技術の拡散を完全に「封鎖」できれば、それだけでもアメリカの対北核政策は成功したと言えるのが問題だ。当初から、北韓が核武器でアメリカを直接攻撃する可能性はなかった。北韓の核武器が、テロリストの手中に入り、テロリストが北韓製核爆弾をアメリカのある都市で爆発させることもあり得るというのが問題だった。
それでは、われわれの立場はどういうふうになるべきか。北側が原爆をいくつも保有している状態で、アメリカが北の核問題が解決されたと宣言すれば、われわれはその日から北韓の核を頭に頂いて載せて生きねばならない。到底受容れられない、容認してはいけない状況だ。
北韓が「6者会談」を拒否し、アメリカとの両者対話をそこまで固執する理由は、北核に対するアメリカの威嚇認識が、韓・日とは比べられないほど弱いという事実のためだ。北韓は、アメリカ人記者を釈放したのを機会にアメリカとの直接対話を待ちこがれている。
「オバマ式発想」は、決してわれわれが受容れられる北核問題の解決方案でないという事実を、アメリカの人々に強く認識させねばならない。
李春根(梨花女大学校兼任教授/未来研究員研究処長)