新・韓日協力時代―共通分母を探して③

「互いの尊敬こそ基本」―金東吉延世大名誉教授に聞く
日付: 2009年08月15日 00時00分

 「韓国の知性」と言われ、自他共に認める韓国保守系の知識人、金東吉・延世大名誉教授(81)。 ソウル・西大門にある自宅に金名誉教授を訪ねた。1階の書斎は韓国語と英語、日本語の書籍で溢れかえっている。机には読みかけの手紙や本がところ狭しと重なっていた。(ソウル=李民晧)

―盧武鉉・前政権における最大の失策として挙げられるのが「韓米日同盟関係の弱体化」でした。現政権に替わり、ある程度は復活したと思いますか。

 「李明博政権誕生当初、親北派たちは、米国で民主党が執権すれば李明博政権は大きな試練を迎えるものと見ていた。しかしそれは完全に的外れだった。民主党政権は北朝鮮に対し、ブッシュの何倍も実利を追求し、圧迫している。李明博大統領はしきりに中立をさけぶが、北朝鮮に対する姿勢は一貫している。無条件的な対北支援は行わず、米国や日本と手をとり、北朝鮮の圧迫に立ち向かうというルールをつくった。そういう意味では、安保にしっかりしたバリアが張られ、韓米日間の協力構造が正常化されたと見ていいだろう」

―韓日関係には、常に壁があります。植民地支配によってでき上がった反日感情ですが、良くはならずともせめて現実を克服すべきではないでしょうか。また、そのためにはどのような工夫が必要でしょうか。

 「反日感情を変えようとするなら、韓国国民の対日観が変わらなければならない。韓国人は、日本が韓国より経済・社会的にはるかに発展した国であることを認めようとしない。秩序意識や信用度を見ると、日本は韓国人が手本とすべき対象だ。韓国ではしかし、国家指導者自らが日本を軽んじる行為をやめようとしないのだ」

―金泳三・元大統領は、「日本の行儀の悪さを直してやる」と言って波紋を呼びましたね。

 「一国の指導者の言葉とは思えないレベルだ。金泳三氏は、日帝時代の残滓をなくす、として総督府の建物を撤去した。それによって過去36年間にわたる日本の植民地支配の歴史が変わるわけではない。中央庁は、日帝時代の歴史的事実を陳列した展示館や博物館として利用すべきだった。そして、ソウルを訪れる日本人たちの必須観光コースに取り入れれば、それを見た善良な日本人たちは、韓国人たちの対日感情を理解できるのではないか。韓国を知ろうとする日本人たちが自然と増えたはずだ。さらに中央庁は1948年8月15日、まさに大韓民国政府が樹立された現場でもある。大韓民国にとっても意味の深い歴史の現場だ。思慮深い指導者であれば、中央庁跡は決して撤去できなかったはずだ」

―韓日関係では、常に歴史問題が取り沙汰されます。これを克服する方法は。

 「我々韓国人は、日本に対する偏見が強い。ともすれば感情だけが残っている。独島問題だけを見ても、感情的な対応ばかりが表立っている。今のままでいけば、独島は紛争地域へと拡大し、国連に国際裁判を委ねることになるだろう。政治的、法的問題へと発展させず、外交的に解決できる問題だ」

―韓国では最近、中国重視論が高まっている半面、相対的に日本を軽視する雰囲気があるようですが。

 「韓国の社会経済問題は、イギリスや米国をはじめとする『大西洋時代』の産物だ。日本もやはり大西洋から大きな影響を受けた国だ。しかし中国はどうだろう。中国の哲学とは何か。韓国とは全く異なる道を歩んできた。韓国の政治社会システムは日本から導入したものが多い。それほど日本とは共通分母が多いが、中国からはそれを見つけることが難しい。韓国が『太平洋時代』を主導するうえで、まず日本との親善が非常に緊要となる。前述の通り、韓国が日本を尊敬しなければならない。それが大前提となる」

―では、日本人の韓国に対する認識はどうあるべきだと思いますか。

 「政治指導者のレベルを今よりも高めるべきだ。近頃の日本の政治動向を見ると、どうも残念に思えて仕方ない。顔をしかめて歩く鳩山氏や小沢氏からは、指導者としての寛大さが見えない。人間関係の基本は相手を尊敬することだ。このルールは国家間でも同じだ。尊敬なくして親善をはかることができるだろうか。西洋では宗教改革以降、すべての職業は神聖であり万人は平等だという認識をつくった。日本はキリスト教を主とする国ではないものの、先祖を尊重し、父親を大切にする。韓国では3代続かず、料理店でも息子の代で終わるケースが多い。そんなことで持続的な発展など期待できるだろうか。自分の仕事に誇りを感じ、最善を尽くす姿勢。人生の根本であり国家発展における基本条件だ。これはまさに、最も近い国である日本が良い見本だ。韓国と日本が相互理解をはかるためには、互いに対する尊敬と、親しもうとする姿勢が最も重要だ」


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