[筆者]べルティル・リトナー(Bertil Lintner)、FEERの元軍事専門記者
[原題] North Korea's IT revolution
[出処]香港、アジア・タイムズのインターネット・レビュー2007年04/24
国際社会は今まで北韓のIT産業の技術水準と関連し、2000年北韓を訪問したマドリン・オルブライト米国務長官に、金正日が彼女の電子メール住所を尋ねた以後ずっと推測ばかりしてきた。ところが、北韓の現在のIT技術は驚くほど精巧化された状態だ。
北韓はすでに長距離弾道ミサイルをはじめ、核兵器まで保有している。したがって北韓の科学技術が相当な水準に達したということは驚くことでない。 北韓は現在韓国よりははるか遅れているが、IT分野において驚くほどの技術力を保有している。北韓は、2006年10月の核実験で国際社会からの制裁を受けて海外からハイテク物資を調達するのに多少の困難が生じた。だが、そのような活動が完全に不可能ではない。
香港、シンガポール、タイ、台湾などを通じてIT関連物資を導入
北韓は、香港とシンガポール、タイや台湾などの現地企業などを通じて、IT産業に必要な物品を獲得している。 北韓のIT戦略を担当する主要機関である「朝鮮コンピュータセンター(KCC)」の場合、1990年、金正日の命令により米貨5億 3千万ドルを投入して設立された。 KCCの最高責任者は、少し前まで国家安全保衛部の第1副部長で金正日の長男である金正男だった。
金正男は、1980年代にスイスの私立国際学校でコンピュータ科学と英語やフランス語をはじめ外国語教育を受けた。韓国情報当局の分析によれば、KCCが設立された時、金正男は平壌市西城区域臥山洞所在の保衛部庁舎の地下2階にあった秘密海外情報収集部署を万景台区域の仙内洞に位置したセンター(KCC)に移したという。
KCCは、1997年火災で全焼したが、金正日は建設費よりもはるかに多い10億ドルを投じて建物をそっくり復元させ、内部施設は外国から最新装備を導入し、性能がはるかに良いものなどで備えたと伝えられている。 KCCは現在傘下に10個のソフトウェア開発生産センターをはじめ、各道にも地域情報センターを設けて研究開発に注力しており、ドイツ、中国、シリア、アラブ首長国連邦などの国家に支社や合弁会社を置いてある。
平壌のイントラネットの構築のため人工衛星通じてデータを送出
KCCのドイツ支社は、2003年ドイツ人のヤーン・ホルターマンの助けでベルリンに設立された。同時期、ホルターマンは平壌にイントラネットを構築してあげた。「国境なき記者団」は、当時北韓のイントラネットの構築費用として70万ユーロが投入されたと把握した。 特に、ホルターマンは、搬出が禁止された敏感な技術を送るため全てのデータをドイツ所在のサーバーを通じて人工衛星で北韓に送った。
ホルターマンは、KCCが初めて開発したIT技術を2006年ハノーバーで開かれたヨーロッパIT展示会に紹介もした。 のみならず、北韓は現在中国の北京と大連に支社を置いて活発に活動している。 また、北韓の別のコンピュータ会社である「実利銀行」の場合、2001年中国を経由して電子メールの発送が可能な初めてのインターネット サービス(ISP)を実施し、引き続き2004年には中国の瀋陽にソフトウェア開発会社の「朝鮮6.15瀋陽奉仕所」を設立した。
北韓国内ではまだ電子メールの接続やインターネット使用が極度に制限されている。だが、北韓は「光明ネットワーク」というイントラネット、即ち、内部のコンピュータ網が構築され、最近はこのネットワークが発展して北韓内でインターネットの役割をしていると知られている。北韓でインターネットを使う人々は、研究所や教育機関で働く役人たちだけだ。
一方、北韓は「わが民族同士」のようなインターネット・サイトを通じて、体制の宣伝に熱を上げている。韓国語・中国語・ロシア語・日本語で翻訳されている「わが民族同士」は、主に金正日の神聖な出生や父親の金日成の抗日闘争などを紹介し、これを称えるのにホームページの大部分を割愛している。だが、実際に金日成は若い時期の大部分をロシア極東地域のハバロフスクで送り、金正日は1942年そこで生まれた。
KCCは三星が製作する携帯電話用のソフトウェアを開発
北韓の官営「朝鮮中央通信」の場合、日本内親北団体である朝総連を通じて、韓国語、英語、ロシア語、スペイン語の自体ウェブサイトを運営し、北韓ニュースを毎日掲載している。もちろん、大部分の内容は「金正日国防委員長がシリア大統領に祝賀メッセージを送った」、「金正日国防委員長の著作がメキシコで出版された」、「カンボジア国王と王妃がプノンペンの朝鮮大使館へ花輪を送ってきた」などで埋められている。
一方、北韓のKCCは、朝鮮語バージョンのLinuxシステムをはじめコンピュータ・ゲームも製作した。驚くべきことは、韓国の三星が開発できる携帯電話用のソフトウェアを北韓も製作しているということだ。 (実際に両社は現在中国でソフトウェアの共同開発センターを運営している。) 北朝鮮のコンピュータ専門人材らは、たいてい中国、ロシア、インドをはじめ、一部は世界最高の技術力を自慢する韓国の技術陣によって養成されている。
弱り目に祟り目で、韓国国防部は2004年公開した国防白書を通じて「北韓には現在500人ほどの専門ハッカーらがおり、彼らは有事の際、敵国を相手にサイバー戦争を遂行できる能力を具えている」と明らかにした。白書は、「北韓の情報戦の遂行能力は、先進国レベルに到達した状態」とし、「北韓のハッキング人材は、5年制大学で電子戦能力を習得し、有事の際韓国とアメリカ、日本を攻撃するはずだ」と指摘した。
北の「人民軍」の電子戦能力はすでに高いレベル
北韓の電子戦能力に対して懐疑的な学者たちは、北側が有事の際アメリカのコンピュータ防御網を破れないと見ている。 彼らはまた北韓が韓国と日本、アメリカなどIT先進国の精巧化された技術力を確保するには相当な時間がかかると判断している。 金正男が現在(2007年4月)もKCCや保衛部の総責であるかは確認されていない。金正男は2001年、偽造旅券で日本の成田空港に現れて日本当局に摘発された。 最近はマカオで彼の姿が日本や香港のメディアに捉えられた以後、現在は中国本土に滞在していると伝えられた。
そして、彼の現在地位が高位職であるかどうかとは関係なく、KCCは以前よりもっと活発に活動していることだけは事実だ。北朝鮮のIT開発は、現在も中断なく進められている。 アジア太平洋安保研究センター(APCSS)のアレクサンドル・マンスロプ博士は、「北韓が最近住民に対する全体主義的監視および統制を強化すると同時に、政治宣伝やイデオロギー教育にも熱を上げている」と指摘した。彼は、「このような北韓の政策がIT産業にもそのまま適用されている。北韓のIT技術は、強大な北韓の軍事力増強に大いに貢献している」と憂慮を表明した。
翻訳・整理;金泌材記者(spooner1@hanmail.net)