申允煕(元陸軍憲兵監)
「12.12事件」とは、朴正煕大統領を殺害した金載圭と深い関連だった鄭昇和陸軍参謀総長を調査するため合同捜査本部へ連行する過程に起きた軍内部の衝突事件だ。それにもかかわらず、金泳三元大統領は、当初はクーデター的事件と命名し、歴史に任せると言ったのに、検察をもって再び調査するようにし、検察は長期間の徹底した調査の末、成功したクーデターは処罰できない、と起訴猶予処分を下したことがある。
ところが、金泳三前大統領は暫らくして再び調査を指示し、現行法ではとうてい処罰できなかったため、憲法に違反してまで「5.18特別法」を急造して、二人の前職大統領と関連者全員を法廷にたてて処罰したのだ。
それでは「5.18特別法」とは何なのか? 「特別法」の名称は、「憲政秩序破壊犯罪の控訴時効などに関する特別法」だ。特別法の構成を見ると、第1条は目的として、この法は憲法の存立を害するか憲政秩序の破壊を目的とする憲政秩序破壊犯罪に対する控訴時効の排除などに関する事項を規定することで、憲法上の自由民主的基本秩序を守護することを目的とすると規定している。
第2条は、用語の正義で、「憲政秩序破壊犯罪」とは、刑法上の内乱の罪、外患の罪、軍刑法上の反乱の罪、利敵の罪をいうと規定し、第3条は、控訴時効の適用排除を規定して、刑事訴訟法と軍事裁判所法に明示されている控訴時効を全く適用しない犯罪を次の通り指定した。
第一、第2条の憲政秩序破壊犯罪、すなわち刑法上の内乱の罪、外患の罪、軍刑法上の叛乱罪、利敵罪などと、第二、刑法第250条の罪として、集団殺害罪の防止と処罰に関する協約に規定された集団殺害に該当する犯罪など五つと指定した。この五つの該当犯罪は、初めから刑事訴訟法などに明示されている控訴時効を適用しないことにしたのだ。
しかし、この特別法を制定した趣旨に対しは理解できるが、この法をすでに控訴時効が過ぎた「12.12事件」関連者らに適用するため制定したということに対しては問題提起をせざるを得ない。
わが憲法の第13条には刑罰不遡及、一事不再理、遡及立法制限などの規定がある。第13条第1項を見れば、全ての国民は行為時の法律によって犯罪を構成しない行為で訴追されず、同一の犯罪に対して繰り返し処罰されないと規定されている。つまり、この法を制定しながら、この法が公布された日の後に上の五つの犯罪はこの法を適用するが、この法の公布以前に控訴時効が終わった行為に対しては処罰できないように憲法に規定されているのだ。
憲法にこのような規定を作っておいたのは、むやみに法律を改正して、過去の行為を口実で自由民主的基本秩序と個人の人権を侵害できないように保護するためだ。それにもかかわらず、 金泳三元大統領は、現行法では処罰できないから法曹界の反対にもかかわらず、憲法に違反してまで急速にこの特別法を制定し、二人の前職大統領をはじめ、「12.12」、「5.18事態」関連者らを拘束して法廷に立てて処罰したのだ。
当時、この特別法が違憲素地があるといって崔世昌元国防長官と張世東元安企部長の令状発給判事が、異例に憲法裁判所に違憲の有無判断を依頼した。違憲か合憲かを持って憲法裁判官たちが激しい論争を行った結果、違憲が5人、合憲が4人で、5対4で違憲意見が過半数を超えた。ところが、3分の2以上になってこそ違憲として判定されるという規定によって、結局、「5.18特別法」は合憲と決定されたのだ。アメリカだったら、違憲と決定されたはずだ。
金泳三元大統領の強力な指示と世論操作で作られたが、「5.18特別法」は過半数以上の憲法裁判官たちが違憲との意思表示を示した。このような違憲的特別法を持って「12.12」、「5.18」関連者たちを処罰したのだ。今や「12.12事件」、「5.18事態」の真実をもう一度再照明せねばならないのはもちろん、政治的に押し通して制定した「反憲法的特別法」によって毀損された軍の名誉が再評価されねばならず、処罰された関連者たちも名誉が回復されねばならないと思う。
申允煕予備役少将/元陸軍憲兵監