北朝鮮は新型長距離ミサイルの発射をしゃにむに進めようとしている。
報じられるところによれば複数のミサイルが複数地点から発射されるのでないかともみられる。ミサイル複数発射の目的は何か。
06年7月にミサイル連続発射実験を行った北朝鮮は昨年すでに、射程3000キロ以上の新型中距離ミサイルを実戦配備したと韓国国防白書が明らかにした。実験を経ない、シミュレーションのみの配備だといわれる。複数発射が行われるとすれば新型中距離ミサイルの実験データを得る目的もあろう。
しかし狭い国土をミサイルで固めてどうしようとするのであろうか。そもそも北東アジアの仮想敵国はどこなのだろうか。周辺のいずれの国とも国家間協議があり、地域安定と経済発展に向けられた提案があるのに解せない。
ICBM発射能力を誇示
舞水端里発射場に長さ三十数メートルの発射体が据え付けられた。専門家はテポドン2号の改良型と見る。ブレア米国家情報長官は「ICBM発射能力を誇示しようとしている」との見方を示した。北朝鮮の技術協力でイランが2月に衛星打ち上げに成功し、北朝鮮はミサイル発射に自信を深めているともいう。
今年に入り、韓国との間に緊張を煽ったすえ国際社会に向けて長距離ミサイル発射に踏み切る北朝鮮の計算は何か。テロ支援国家指定を解除した米国に北朝鮮を核保有国と認めさせ、核軍縮交渉を通して米朝正常化を図るという戦略にあることは明らかだ。
北朝鮮外務省報道官は1月17日に「核と米朝国交は次元を異にする問題だ」と発言し、軍参謀部は2月2日、「核保有」したままの「核軍縮」、米朝国交交渉を要求した。06年10月、小型地下核実験を強行した北朝鮮が、長距離ミサイルテストを行うのは米国への圧力であるのははっきりしている。北朝鮮外務省は、核の放棄は米国の核の脅威が取り除かれ、北朝鮮に対する不可侵が確実な状況となった場合にのみ可能だと、NPT体制にも挑戦することを示唆したことが懸念される。6カ国協議で対話の枠組みを維持する北東アジアの平和と安定の構図は無視する言動だ。武力としての核を放棄し、核計画を転換するべきだ。
協調を無視しては成り立たない
2月の参謀部インタビューでは、「朝鮮半島の非核化は北朝鮮の核だけではない。韓国も検証の対象になる」と言いがかりをつけた。北の核開発に対する韓国内の反発と米国の核のカサ問題を逆手に取る核開発の正当化だ。かつて旧ソ連・中国と軍事同盟を結んだことを北当局は忘れたのだろうか。NPT体制をホゴにする北朝鮮の出方は不安定きわまりない。国際間の縛りを無視する振る舞いだ。
北朝鮮当局の対外行動に対する疑惑の最大部分は、国際関係を無視して「先軍政治主義」を推し進めようというところにある。北朝鮮の「先軍」は体制維持のための最後の路線であり、朝鮮半島の外への膨張の心配はない。問題は南への膨張、言いかえれば武力を背景とした南北統一路線にある。
東西の雪解けを受け1991年に結ばれた南北非核化共同宣言(92年発効)は、当時のブッシュ政権との間で韓国内の核の不存在の検証を行ったうえで金日成政権と盧泰愚政権との間に成立した。核兵器の実験・製造・授受・貯蔵・配備・使用をしないことが盛り込まれている。再処理施設とウラン濃縮施設の保有も禁じた。金日成政権にはそのような大らかな一面があった。
金正日政権は極端な個人崇拝を長期化させる「伝統化政策」に取り組んでいるとみられる。今月招集される最高人民会議で核開発・対米国交交渉・強盛大国建設を掲げる「後継体制づくり」が宣言されるなら、周囲を失望させることは確実だ。
宇宙開発も経済発展も、南北の対等な協力関係と国際間の協調によって成し遂げられる。ミサイル発射は中止するべきである。