韓国国会内で2月27日、民主化実践家族運動協議会女性メンバーから与党ハンナラ党の田麗玉議員が暴力を受け、目を負傷する事件が起きた。田議員は暴行したグループから「目をくりぬいてやる」と脅迫されたという。事件は国会本庁陳情室近くで起きた。国会内で議員へのテロが起きたのは民主主義を否定し、拒否する社会的風土が根強く残っている表れであり、断じて許されない。
韓国議会の試練
田議員は、1989年5月に起きた釜山・東義大事件に対する民主化運動認定(02年)を取り消す再審議法案(民主化運動関係者補償法改正案)を国会提出しようとしていた。改正案が成立すれば金大中、盧武鉉政権下で民主化運動補償審議委員会が下した決定すべてについて再審議が可能になる。
東義大事件では、不正入試で揺れた大学キャンパスで学生によって監禁された戦闘警察隊員救出に際し学生らの投げた火炎ビンで警察官7人が死亡し、10人が重いやけどを負った。ところが補償委は逮捕者31人を民主化運動関係者と認定し、多額の補償を実行して警察官遺族に衝撃を与えた。独立行政委員会による行き過ぎた民主化評価に対して、「命を懸けて暴力と闘う人を正しく評価していない」という世論が強まった。
民主化実践家族運動協議会らメンバーの先走ったテロ行為は昨年末からの大荒れ国会と無縁であるまい。改正メディア法と韓米FTA批准をめぐる野党の議会施設破壊など暴力的阻止行動が背景にある。ソウル市龍山区再開発地区で1月20日起きた火炎ビン衝突では住民・活動家・警察官合わせて6人が死亡した。事件は他人の建物に入って火炎ビンを投げた都市ゲリラだ。この事件も議員テロを促した可能性がある。1年前の2月10日未明起きた国宝1号南大門への放火事件も忘れられない。在日韓国・朝鮮人社会でも北体制の行き詰まりを「戦争で解決するのも仕方なし」と暴力化を唱える言動が一部に起きている。実に警戒すべきだ。国会内での議員襲撃もテロ・暴力の社会風潮に対する警鐘として受け止めなければならない。
正常でない危機に対する意識
このテロ・暴力の社会的風潮を増幅させたのが、この10年間の親北政策とその残滓だ。大統領選挙という主権者の意思によって登場した李明博政権を悪罵する北朝鮮当局の傍若無人な危機煽りが南北間の緊張を高めているさなかだ。危機を煽る「北朝鮮劇場」のなかの親北現象を冷静に見つめ直し、韓国の民主化の本来のあり方と親北政策との関係をとらえ直すべきだ。正常でない危機意識を払拭し本来の意識を取り戻すことが必要だ。
「北朝鮮は南北間の全面対決態勢に入った」との人民軍総参謀部声明(1月17日)から1カ月半、韓国の軍・警察は非常態勢に入っている。将兵・警察官の疲労はかなりなものだという。「政治および軍事的な対立を終わらせるための北南間のすべての合意は無効になる」との北朝鮮祖国平和統一委員会の声明(1月30日)に対しては韓国の一部で、数カ月以内に38度線直下の白〓島を北朝鮮人民軍が攻撃する可能性もあると警戒している。島には住民と韓国海兵隊合わせて5000人以上が生活・駐屯している。もし北朝鮮軍が上陸するような事態になれば第3次西海海戦に発展する可能性もある。金正日政権は「韓国が本格的な反撃を行えば外資引き揚げを招くから攻撃はできない」と見ているという。
米国は北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除した。財政出動を進める金融危機のさなか、北朝鮮による局地紛争化に米国はどう対応できるだろうか。数年前とは対韓関係に対する米国の姿勢に変化が起きているともいう。北当局の威嚇政策はまさに政権延命を図るための状況を作り出す政策である。
「民主化」の果実をタテにテロ・暴力を正当化する背景には、金正日政権の「先軍政治」を脅威と感じない異常がある。発足2年目を迎えた李明博政権は暴力がまかり通るのを許してはならない。